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建機販売、北米市場に陰り。「15年度は販売台数が下がるかもしれない」(コマツ)

住宅着工は堅調もシェール関係が落ちる
建機販売、北米市場に陰り。「15年度は販売台数が下がるかもしれない」(コマツ)

自動制御建機

 建設機械業界をけん引する北米市場に陰りが出つつある。シェールガス・オイル開発がピークを過ぎ、関連プラント向け需要が落ちているとみられる。中国市場の需要が大幅に落ち込む中、北米は頼みの綱といえる地域。だが、成熟市場である北米に大きな伸びは期待できないとの見方が強い。

 「増収したが為替の効果がほとんど。実態は伸びていない」―。日立建機の桂山哲夫執行役常務最高財務責任者(CFO)は2015年4―9月期の北米売上高をそう表現する。「住宅着工は良いが、シェール関係が落ちている」と危惧する。

 北米では08年のリーマン・ショックの影響で建機販売が大きく落ち込んだが、以後は伸びが続く。直近のピークだった07年に次ぐ水準にまで回復した。

 好調の理由が住宅着工や道路工事、そしてシェール開発だ。住宅着工は引き続き伸びると見込まれるが、シェール開発は、シェールガスを原料にしたプラント建設のピークが過ぎつつある。コマツの篠塚久志取締役常務執行役員は「15年度は販売台数が下がるかもしれない」と予想する。

 コベルコ建機は米国の新工場の生産開始時期を当初予定より3カ月遅らせ、16年4月にした。三木健取締役専務執行役員は「シェール関連で在庫が増えている」と説明する。シェール開発向けはレンタル会社への販売が多いが、販売が止まっているという。

コマツ、米サービス要員倍増。自動制御建機の導入支援


 コマツは米国で、施工を自動制御する建設機械の導入支援を担う専門サービス員「テクニカルソリューションエキスパート(TSE)」の人員を現在の数十人から2015年度末に約2倍に増やす。自動制御建機は導入時に操作方法のトレーニングが必要になる。13年以降に販売を始めた自動制御建機の販売が好調のため、TSEを増員してサポート体制を強化し、拡販につなげる。

 コマツは自動制御可能な建機として、13年にブルドーザー、14年に油圧ショベルを発売した。全地球航法衛星システム(GNSS)など情報通信技術(ICT)を活用して掘削作業などを自動制御できる。米国、欧州、日本で投入し、ICT活用の素地がある米国では特に販売が伸びている。

 TSEは通常の機種を担当するサービス員とは異なる職種で、自動制御建機の性能発揮に必要な操作方法を指導する。販売の伸びに対してTSEの人数が追いついていない現状に対応し、倍増する。

 サービス員でも自動制御建機に強い人材を増やす。TSEだけでは人員が不足するため、サービス員にTSEの仕事の一部をカバーしてもらう。該当するサービス員を15年度末時点の約90人から17年度末時点で数百人にする。

 中国などの新興国で建機需要が大幅に落ち込む中、北米では住宅やインフラ向けの需要が好調で、建機メーカーが業績を伸ばしている数少ない地域となっている。コマツが得意とする自動制御建機の販売拡大も見込めるため、TSEなどの増員でサービス体制を拡充する。
日刊工業新聞2015年12月3日機械面の記事から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
「(日米欧の)伝統市場は過去30年見ると循環しており一本調子で上がることはない」(大橋コマツ社長)。その中でコマツは次のサイクルに向け布石を打っている。

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