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カレー、すし、リゾット…外食・中食に合わせたコメの多品種化進む

ブランド米にとどまらず
カレー、すし、リゾット…外食・中食に合わせたコメの多品種化進む

外食・中食分野向のコメ品種の多様化が進んでいる

 ブランド米にとどまらないコメ品種の多様化が進んでいる。カレーライス用の「華麗米」、すし用の「笑みの絆」、リゾット用の「和みリゾット」といった外食・中食分野用のコメだ。減反制度廃止や環太平洋連携協定(TPP)も見据えた自由化が進む中、新たなニーズに応えるコメ品種の開発・栽培も重要な生き残り戦略になる。

 「外食・中食のコメ消費は主食用米の3分の1を占め、さらに拡大中。だが農家が作付けする品種はコシヒカリなどのブランド米ばかり。外食・中食が求めるコメとのギャップが広がりつつある」。農研機構中央農業総合研究センターの前田英郎上席研究員は指摘する。全国で栽培されるコメ品種の1位はコシヒカリで作付け比率36%、2位以下はひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、ななつぼしといずれもコシヒカリの系統を引く品種が続く。コシヒカリ系の占める比率は実に約8割と、コメ農家の大半がコシヒカリを作っている状況だ。

 確かに家庭の食卓で食べるコシヒカリは美味だが、用途によっては他のコメ品種の方が優れている場合も多い。例えばすし。すし用のコメはコシヒカリのように粘りけの強いものでなく、あっさりした食感が良いとされる。すし店ではこの点で優れるササニシキを指名して使う例も多いが、さらに上を行くのが農研機構中央農業総合研究センターが開発した「笑みの絆」。すし用を狙って開発した新品種で粘りが強すぎず、酢になじみ、ほぐれやすく、あっさりした食感を持つ。

 カレー用「華麗米」はハウス食品と共同開発した。カレー用米だとパラパラしたインディカ米のイメージもあるが、日本のカレーは小麦粉などでトロミをつけた欧風タイプが主流。華麗米はインディカ米とうるち米の中間としてインド品種と日本品種を交配。表面は硬くて中身は柔らかい。

 製めんに適した「越のかおり」もある。アミロース成分がコシヒカリの18%に対し25%以上あり、めんにした時ほぐれやすく、ゆで溶けも少ない。リゾット用「和みリゾット」は大粒でアルデンテの食感が残り、粘りが少なく調理しやすい。国内のイタリア料理店から「イタリアからコメを輸入すると高い。日本で専用品種が作れないか」と相談を受けたのがきっかけという。

 外食の牛丼店やコンビニのおにぎりでは、契約農家などで専用品種を導入する企業も多い。自由競争時代に入った今、市場の実態に合わせたコメの開発・栽培が求められる。
日刊工業新聞2015年12月3日 建設・エネルギー・生活2面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「おいしい」「香りが良い」というコメ自体のこだわりだけでなく、食事によってコメを変えるというのは、日本人ならではの食に対するどん欲さのような気がします。

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