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ドラえもん、鉄腕アトムもシステムインテグレーターがいてこそ

文=三治信一朗(NTTデータ経営研究所) 「ロボットは半製品。SIの専門職化、外部化ですそ野拡大を」
ドラえもん、鉄腕アトムもシステムインテグレーターがいてこそ

安川電機が愛知県に開設したシステムインテグレーターへの研修施設

 ロボットというと、ドラえもん、鉄腕アトムなど、人と同等かそれ以上の機能があると期待される。しかし、ロボットは半製品であり、ロボットを買ってもすぐに効果が発揮される場面は限られている。このため、ロボットを使って機能を発揮する、システムインテグレーター(SI)が必要となる。

 SIは、製造業ではロボットエンジニアリング企業ともいわれ、工程の設計からロボットを導入した場合のシミュレーション、実際にプログラミングした上で動かし効果分析などを行い、ラインでのテストを通じて稼働に至る。この一連の業務により、ロボットを導入した効果を費用対効果も考慮して、最大化していくことができる。

 サービスロボットも、例えば、ロボット介護機器などを含めて、プロユースの利用から普及が始まっている。サービスロボットであっても効果を最大化するためには、その利用用途に応じた使いこなしが大事になっている。そう考えると、ロボット製品そのものの完成度・技術力を向上させていくことも大事だが、ロボット製品の特性そのものをきちんと知っていることも、ロボット産業のすそ野拡大のためには極めて重要である。

ロボット導入への技術者確保、9割の企業が課題抱える


 公益社団法人ちゅうごく産業創造センターの調べによれば、ロボット導入の課題・阻害要因は、ロボット製品の価格の高さのほかにも、技術的課題が挙げられている。また、ロボット導入をした企業であったとしても、課題がないと考えているのは10%程度であることがわかっている。

 それだけ、ロボットの取り扱いが難しいにもかかわらず、ロボット導入技術者の確保は、当調査に基づけば9割近い企業がままならないとしている。ほとんどの企業では確保できてないということになる。

 このような状況から、よりロボットの取り扱いに詳しいSI育成のための取り組みが始まっている。経済産業省の、ロボット導入実証事業が一例である。この取り組みは、ロボットの先進的な事例を作るために、SIの活用を推奨している。また、日本ロボット工業会のシステムエンジニアリング部会においても、SIの組織化を検討している。

 これまでSIの機能は、大企業、特に自動車関連企業の内部で生産技術関連部署が担うことが多く、内製されることも多かったが、専門職化と外部化が進んできている。この動きは、ロボットの産業構造の変化をもたらす。

ファナックとPNFが深層学習技術で作業を高効率


日刊工業新聞2015年12月2日


 ファナックはプリファード・ネットワークス(PFN、東京都文京区)と共同で、ロボットによるバラ積み部品の取り出し作業を高効率・高速化できるシステムを開発した。PFNのディープラーニング(深層学習)技術を活用する。ロボットが作業中に適切な取り出し方を割り出し、徐々に成功率を高めていく仕組みだ。ロボットとビジョンセンサーを組み合わせたシステムとして、2016年前半の商品化を目指す。

 今回開発したのはロボットが部品の積んである状態を学習し、作業しながら取り出し方を最適化するシステム。通常は3Dビジョンセンサーを用い高い場所の部品から順番に取り出すが、新システムでは部品の向きや位置などに関する一定の規則性を割り出し、ロボットが最もつかみやすい状態の部品から取り出すことができる。

 ファナックの小型垂直多関節ロボット「LRメイト200iD」を用い円柱鋼材を対象に行った実験では、開始時に約7割だった取り出しの成功率が作業中に9割近くまで高まることを確認した。

 ロボットとビジョンセンサーを用いたバラ積み部品の取り出しは、人による単純作業を自動化する手段として期待されており、自動車部品メーカーなどの間で採用が広がっている。ただ、対象物の状態によってはロボットがうまくつかめないこともあり、効率改善が求められている。

 ディープラーニングは得られた情報から規則性などを自動で学習できる技術で、人工知能(AI)関連の研究として注目を集めている。

東大発ベンチャーが余計な経由点の教示不要な制御装置


日刊工業新聞2015年10月30日付


 MUJIN(東京都文京区、滝野一征代表取締役CEO、03・4577・7638)は、ティーチングペンダントで動きを教える一般的な産業用ロボット向けの汎用コントローラー「ティーチワーカー=写真」を開発した。サーボモーター搭載ロボットならメーカーを問わず使える。価格は当初70万―80万円を想定、来春以降発売する。

 同社は東京大学発ベンチャーで、メーカーを選ばず制御できるコントローラー「MUJINコントローラ」を展開する。同コントローラーはロボットのメーカーを選ばない汎用性と、ポイントを指定すれば瞬時に障害物などを避けた目的の動きを自動的に導き出すリアルタイム動作計画の技術を盛り込んでいることが特徴。現在は主にばら積み作業向けのハイエンドモデルとして発売し、売り上げも好調という。

 今回、多くの製造業が活用する産業用ロボットに不可欠なティーチングペンダントによる動作の教示をより簡潔にするため、MUJINコントローラに新モデルを加えた。

 MUJINの特徴の一つである障害物、特異点、関節リミット自動回避機能はそのままに、目的のポイントまでの動作を自動で導き出すため、余計な経由点を教示する必要がない。ティーチングペンダントとコントローラーのセットで提供し、将来はロボットメーカーや機械メーカーを中心に世界で年間1万台の販売を目指す。

 同コントローラーは12月2日から東京・有明の東京ビッグサイトで開かれる「2015国際ロボット展」で披露する予定。
日刊工業新聞2015年11月27日 ロボット面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
PNFもMUJINも東大発のベンチャー。大手の産業ロボットメーカーがディープラーニングなどで外部のベンチャーと積極的に連携していこうとする流れはとても良い。

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