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富士フイルムやキヤノンが若者へ「写真プリント」の楽しさ伝える

プリンター事業の活性化だけでなく、デジカメへの波及も期待
富士フイルムやキヤノンが若者へ「写真プリント」の楽しさ伝える

富士フイルムの直営店にあるデコレーションコーナーも、高校生に人気

**プリクラ風の編集機能やアイドルとの連携も
 富士フイルムキヤノンマーケティングジャパン(MJ)が、若年層の写真プリント需要の掘り起こしに力を入れている。プリントシール機「プリクラ」風の編集機能を強化したり、若者に人気のアイドルと連携したりと、その方法はさまざま。写真を印刷する楽しさを定着させ、プリンター事業の活性化につなげる。両社の取り組みは、若年層がカメラに興味を持つきっかけになる可能性も秘めている。

 「『リアルの良さ』が戻ってきているように感じる」。富士フイルムイメージング事業部CSマーケティンググループの種田進統括マネージャーは、手応えに自信をみせる。同社は画像データから写りの良い写真を自動で選び、アルバムにしたり1枚の台紙にレイアウトして印刷したりするサービスを展開する。店頭受付機の操作性をスマートフォンと同様にしたほか、スタンプや文字を入力できる機能も搭載。プレゼント用を中心に、若年層の利用が増えているという。

 2014年2月には市場調査も兼ねた直営店を東京・原宿にオープン。1カ月当たりの売上高は、開設当初に比べ2倍に伸びた。店内には作成した写真にシールなどでデコレーションできるコーナーもあり、平日の夕方や休日は高校生や大学生でにぎわう。種田統括マネージャーは「思い出の写真を贈る、という具体的な提案が受けた」と分析する。

 キヤノンMJは10月にレコード会社、エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ(東京都港区)に所属するアーティストのフォトブックを作成できるサービス「a―PRESSO(エイプレッソ)」を開始。従来の写真アルバム作成サービスでもスマホ対応を強化するなど、主に若い女性をターゲットにプリント需要を喚起する。

 同社プリンティングソリューション企画本部の青木武チーフは「これまでキヤノンとの接点が少なかった10―20代前半の取り込みを加速し、事業拡大につなげていきたい」と意気込む。

狙うのはスマホに保存された大量の写真データ


 両社が狙うのは、スマホに保存された大量の写真データ。主に写真店向けの印刷機を扱う富士フイルムと、家庭用インクジェットプリンターや商業印刷機を扱うキヤノンMJは共に、写真プリント需要の縮小による販売低迷が課題。特にカメラになじみの少ない10―20代前半の若年層取り込みが急務だった。

 一方でスマホの登場により、写真撮影ショット数はフィルム時代に比べ20倍に増えたとも言われる。プリントする楽しみを喚起できれば、事業の再活性化につなげられる。

 プリントニーズの掘り起こしにより、両社が手がけるデジカメ事業への呼び水になる可能性も出てきた。富士フイルムは直営店内に大判写真や自社のデジカメを展示するコーナーを設けた。スマホの写真を印刷する楽しみを覚えた顧客が「より良い写真を撮りたいとカメラそのものに興味を持つケースが増えてきた」(イメージング事業部の木村悦子氏)と見る。展示スペースの拡充も検討中だ。

 キヤノンMJの青木チーフも「きれいな写真を残したい気持ちが高まり、きちんとしたカメラで撮りたいという動きはある」と期待を寄せる。若年層でプリントとカメラ需要の好循環を作れれば、事業成長へのヒントが見えそうだ。
(文=政年佐貴恵)
日刊工業新聞2015年12月1日 電機・電子部品・情報・通信面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
写真プリント復活の発端となったのが、富士フイルム「チェキ」。若い世代にはプリントの物珍しさに加えて「新鮮な感じ」というのがウケているようだ。インスタントカメラ販売の底となった2004年から需要が1周した、という見方もあるかもしれないが、打ち出し方を変えれば新しい顧客層にリーチする、という好例ではないだろうか。

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