「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(8)お題は西郷隆盛の遺訓集

稲盛名誉会長も毎月参加する幹部社員160人のグループ討論で組織に風穴

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地獄の特訓で親しみが醸成されていく
 日本航空(JAL)本社2階のウィングホールで部長級以上の幹部社員160人が5人ほどのグループに分かれ、ひしめき合ってテーブルを囲む。毎月1回行われる研修会「リーダー勉強会」では、課題に沿って役員がリポートを発表し、グループで討論する。2月半ばに開かれた同会の課題は西郷隆盛の遺訓集「西郷南洲翁遺訓」。名誉会長の稲盛和夫も毎月、最前列のテーブルでグループ討論に参加する。稲盛はこの日の最後、「みなさん西郷南洲翁遺訓をよく勉強してきた」と手放しに褒めた。

 2010年6月の1カ月間、JALの全役員に対して実施した「リーダー教育」では、最後に川崎のホテルで合宿を行った。最初は発言も少なかったが、この合宿ではホテルのレストランに畳を敷いて、朝4時までかんかんがくがくの議論をしたという。意識改革担当としてJALに入った京セラ取締役の大田嘉仁は「官僚的な組織のJALは、本部長同士が話してはいけない文化があったが、地獄の特訓でみんなが親しくなり、和気あいあいとした雰囲気に変わった」と当時を振り返る。

 JALは経営破たん直後の11年3月期に、営業利益で約1800億円を計上した。更生計画上の目標は600億円で、これを1200億円上回ったことになる。営業利益が大きく伸びた要因は、営業費用をピーク時の半分となる1兆1738億円まで絞り込んだためだ。大田は「11年4月の部門別採算制度の導入まで、しばらくは意識改革だけで実績を上げた」と話す。
 
 路線統括本部国際路線事業本部長の米澤章は「経営破たんで自分たちが間違っていたと分かり、これから何を信じてやっていくべきかと自分に問うたとき、フィロソフィと部門別採算は腹に落ちた」と話す。その一方で、路線統括本部長の菊山英樹は「与えられただけでは確信は持てなかった。結果を出しながら確信に変わっていった」と、当時の複雑な胸の内を明かす。

 京セラが持ち込んだリーダー教育やフィロソフィは、短期間でJALに浸透し、目に見える形で実績を残した。製造業である京セラの経営理念が、JALの膠着(こうちゃく)した組織に風穴を開け、社員を一つの方向へ動かした。

日刊工業新聞2015年03月17日 建設・エネルギー・生活面

COMMENT

高屋優理
編集局第二産業部
その他

管財人だった瀬戸英雄弁護士と京セラの大田嘉仁取締役が共通して言っていたのは、「JALの社員は最初は反発するが、すぐに分かってくれた、話せば分かる人ばかりだった」ということです。JALが驚異的なスピードで社員の意識を変え、業績回復を成し遂げたのは、そういうところも大きかったのかもしれません。お二人とも口を揃えて言っていたので、面白いなと思いました。

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