総合電機メーカーが狙う「自動運転」という魅惑の市場
日立グループ、三菱電機が総力戦で先進技術をアピール
日立オートモティブシステムズは、日立グループの総合力を生かして自動運転市場に切り込む。このほど公開した自動運転の試作車は、カメラやミリ波レーダーをはじめとするセンサー類、ブレーキ、ステアリングといったアクチュエーター類、統合制御用の電子制御ユニット(ECU)などの基幹部品をすべて日立グループ製品で構成した。グループの事業領域の広さを最大限に活用し、独ボッシュや独コンチネンタルといった競合との勝負に挑む。
試作車は加速や操舵(そうだ)、制動のうち複数の操作を同時に自動車が行う「レベル2」の自動運転を想定している。報道陣向けのデモでは、安全かどうかを車が判定して自動で車線変更を行ったり、先導車に追従して車線を逸脱せずに自動走行したりする様子を公開した。日立オートモティブシステムズの川端敦常務最高技術責任者(CTO)は「日立グループの技術をすべて盛り込んだ」と自信をみせる。
周辺環境を認識するセンサー技術では、グループのクラリオンが得意とする車載カメラを使った画像認識と、ミリ波レーダーを連携。車両の前後左右にカメラとレーダーを四つずつ設置し、車の周辺を360度検知するシステムを開発した。自車に急接近する追越車の存在を後方約100メートルの地点から検知し、実際に追い越すまで途切れなく検知し続けることができる。二つ隣の車線で併走する車の検知も可能だ。
クラリオンとの連携は2018年に製品化を目指す自動駐車システムでもみられる。高精細デジタルカメラにより駐車可能な空間を検知し、自動による縦列・並列駐車をスムーズに行う。並列駐車時は左右両側の駐車可能スペースを検知する。買い物用カートなどの障害物を避け、安全に自動駐車する。
川端常務CTOは自動運転領域における日立の強みについて「ポートフォリオの広さ」と説明する。事業の選択と集中という意味ではポートフォリオの広さはマイナスだが、「ありとあらゆるものがつながってくる自動運転ユニットについてはプラスになる」(川端常務CTO)とみる。グループの総合力で、安全性とともに快適性や環境性能を兼ね備えた自動運転システムを開発し、完成車メーカーに提案していきたい考えだ。
電機大手が自動運転技術の開発に力を注いでいる。三菱電機は10月27日に業界で初めて、人工知能(AI)の技法の一つであるディープ・ラーニング(深層学習)を使って、不注意運転の検出技術を開発したと発表した。日立製作所は一般道での自動運転の実用化に向けて、AI技術の利用によって歩行者の行動を予測し、衝突を防止する基本技術を開発した。
三菱電機は不注意運転の中でも、直線走行時に起こりやすい「漫然運転」に着目した。漫然運転は考え事をしたり、ぼうっとしたりした状態で運転することで、「居眠り運転」を上回る自動車事故の主因になっている。
車載ネットワーク(CAN)から取得した車両情報や、ドライバーの心拍数などの生体情報、車内カメラの映像から得た顔情報など複数のセンサー情報を使う。数秒おきにセンサーが計測したこれらの時系列データを、新開発の7層のディープ・ラーニングのアルゴリズムでリアルタイムに解析する。
わずか数秒の間に集めたデータから、現在より1秒先の未来の「適切な運転」を予測する。その上で現在の運転と比較し、大きくズレていれば「漫然運転」の状態にあると判断、アラームなどで警告する。これを常時、更新しながら行う。
これにより、時間の前後関係を考慮していなかった従来の3層ニューラルネットワークを使った機械学習のアルゴリズムに比べ、予測精度を3倍以上に高めた。三菱電の中川路哲男情報技術総合研究所長・役員理事は、「今後は機器の中に人工知能を組み込み、リアルタイムで動かすスマートな機械が増えてくる」と見通す。
日立グループは、ロボットの移動経路を計画する際に使われる「ポテンシャル法」に着目した。移動体と障害物との位置関係から移動体の将来の行動を予測する手法を使って、歩行者の行動変化をモデル化する。
これによって、歩行者が車と衝突することが予測される場合には、自動的に減速する。安全性が見込める場合は、減速せずに実用的な速度を維持する。こうした最適な速度パターンを求める演算を並列処理などと組み合わせ、汎用的な組み込みプロセッサーに比べて約200倍に高速化した。運転を即時に修正できる。
安全・安心で快適な自動車社会への期待が高まり、先進運転支援システム(ADAS)市場は2025年に1兆820億円を突破する見込み。ドライバーが運転に全く関与しない完全自動運転(レベル4)の実用化は30年以降になるとされており、当面は何らかの形で人が運転に介在すると言われている。
試作車は加速や操舵(そうだ)、制動のうち複数の操作を同時に自動車が行う「レベル2」の自動運転を想定している。報道陣向けのデモでは、安全かどうかを車が判定して自動で車線変更を行ったり、先導車に追従して車線を逸脱せずに自動走行したりする様子を公開した。日立オートモティブシステムズの川端敦常務最高技術責任者(CTO)は「日立グループの技術をすべて盛り込んだ」と自信をみせる。
周辺環境を認識するセンサー技術では、グループのクラリオンが得意とする車載カメラを使った画像認識と、ミリ波レーダーを連携。車両の前後左右にカメラとレーダーを四つずつ設置し、車の周辺を360度検知するシステムを開発した。自車に急接近する追越車の存在を後方約100メートルの地点から検知し、実際に追い越すまで途切れなく検知し続けることができる。二つ隣の車線で併走する車の検知も可能だ。
クラリオンとの連携は2018年に製品化を目指す自動駐車システムでもみられる。高精細デジタルカメラにより駐車可能な空間を検知し、自動による縦列・並列駐車をスムーズに行う。並列駐車時は左右両側の駐車可能スペースを検知する。買い物用カートなどの障害物を避け、安全に自動駐車する。
川端常務CTOは自動運転領域における日立の強みについて「ポートフォリオの広さ」と説明する。事業の選択と集中という意味ではポートフォリオの広さはマイナスだが、「ありとあらゆるものがつながってくる自動運転ユニットについてはプラスになる」(川端常務CTO)とみる。グループの総合力で、安全性とともに快適性や環境性能を兼ね備えた自動運転システムを開発し、完成車メーカーに提案していきたい考えだ。
ディープ・ラーニング、安全運転を高いレベルで
電機大手が自動運転技術の開発に力を注いでいる。三菱電機は10月27日に業界で初めて、人工知能(AI)の技法の一つであるディープ・ラーニング(深層学習)を使って、不注意運転の検出技術を開発したと発表した。日立製作所は一般道での自動運転の実用化に向けて、AI技術の利用によって歩行者の行動を予測し、衝突を防止する基本技術を開発した。
三菱電機は不注意運転の中でも、直線走行時に起こりやすい「漫然運転」に着目した。漫然運転は考え事をしたり、ぼうっとしたりした状態で運転することで、「居眠り運転」を上回る自動車事故の主因になっている。
車載ネットワーク(CAN)から取得した車両情報や、ドライバーの心拍数などの生体情報、車内カメラの映像から得た顔情報など複数のセンサー情報を使う。数秒おきにセンサーが計測したこれらの時系列データを、新開発の7層のディープ・ラーニングのアルゴリズムでリアルタイムに解析する。
わずか数秒の間に集めたデータから、現在より1秒先の未来の「適切な運転」を予測する。その上で現在の運転と比較し、大きくズレていれば「漫然運転」の状態にあると判断、アラームなどで警告する。これを常時、更新しながら行う。
これにより、時間の前後関係を考慮していなかった従来の3層ニューラルネットワークを使った機械学習のアルゴリズムに比べ、予測精度を3倍以上に高めた。三菱電の中川路哲男情報技術総合研究所長・役員理事は、「今後は機器の中に人工知能を組み込み、リアルタイムで動かすスマートな機械が増えてくる」と見通す。
日立グループは、ロボットの移動経路を計画する際に使われる「ポテンシャル法」に着目した。移動体と障害物との位置関係から移動体の将来の行動を予測する手法を使って、歩行者の行動変化をモデル化する。
これによって、歩行者が車と衝突することが予測される場合には、自動的に減速する。安全性が見込める場合は、減速せずに実用的な速度を維持する。こうした最適な速度パターンを求める演算を並列処理などと組み合わせ、汎用的な組み込みプロセッサーに比べて約200倍に高速化した。運転を即時に修正できる。
安全・安心で快適な自動車社会への期待が高まり、先進運転支援システム(ADAS)市場は2025年に1兆820億円を突破する見込み。ドライバーが運転に全く関与しない完全自動運転(レベル4)の実用化は30年以降になるとされており、当面は何らかの形で人が運転に介在すると言われている。
2015年10月28日科学技術面/11月24日自動車面