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【COP21開幕直前】世界のCO2の12%に価格がつく時代

中国が排出量取引制度拡大、広がるカーボンプライシング
【COP21開幕直前】世界のCO2の12%に価格がつく時代

炭素税、排出量取引の導入国・地域

 企業が排出した二酸化炭素(CO2)に価格を付ける「カーボンプライシング」(炭素価格制度)が世界各地に広がっている。排出量取引と炭素税を合わせると、世界の排出量の12%に価格が付いている状況だ。中国が一部都市で実施する排出量取引制度を2017年から全国規模に広げると、割合はさらに上昇する。中国の取引制度は試行中でありながら世界最大の取引制度であり、17年以降に進出する日本企業にとっては負担となりそうだ。

 中国は9月末の米中首脳会談で、排出量取引制度の拡大を表明した。事業所に排出量の上限となる排出枠(キャップ)をかぶせ、上限を超えた事業所がペナルティーとして他の事業所で余った排出量を購入するため、「キャップ&トレード」と呼ばれる。排出枠が事業者への削減目標となる。

 気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向け、中国はGDP当たりの削減目標と一緒に30年までに排出量を減少に転じさせる目標を提出した。達成手段の一つが排出量取引だが、17年から制度の詳細は公開されていない。

 2省5都市で試行中の制度のルールは、それぞれの都市に任されている。日系企業も例外ではなく、パナソニックの深センの電子部品工場は1万5000トンの排出枠を割り当てられている。現地紙の報道によると深センでは13年、631社中280社が排出量を購入したという。

 欧州連合(EU)は世界に先駆けて域内を対象とした制度を運用する。08年秋のリーマン・ショック後の経済危機で排出量が自然減少すると、市場で取引する排出量の価格が暴落した。取引が停滞した経験から、19年からは価格維持のための需給調整を始める予定だ。

<無料時代終わる>
 
 みずほ情報総研環境エネルギー第2部の永井祐介コンサルタントは「やりながら修正している」と見る。また、EU各国でも省エネルギー規制や発電所への排出規制が始まっており「排出量取引は一つの政策オプションになった」(永井コンサルタント)と分析する。

 各国の政策担当者にも排出量取引への過度な期待はなくなった。それでも排出量取引に炭素税を含めると全世界の排出量の12%に価格が付いている。東京都や埼玉県、韓国でも取引制度が始まっている。「排出が無料の時代が終わりつつある」(同)。

 COP21の後、地球上のほとんどの国が削減目標を持つため、なんらかの炭素価格制度の導入が増えてもおかしくない。多くの国・地域で事業展開する企業ほどCO2に支払うコストが積み上がる。
(文=松木喬)
2015年11月25日 素材・ヘルスケア・環境掲載
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
世界全体のCO2排出量の12%に価格がつき、排出した企業は税金であったり、ペナルティとしての排出量の購入であったりでお金を払っています。(電力、鉄鋼、化学、製紙といったエネルギー多消費型産業に対象業種が絞られているケースが多いようです)。12%を多いとみるのか、少ないとみるのか。そして記事でも触れましたが、631社中280社が排出枠を超過してしまった深センの実績事例から、中国の制度を厳しいとみるか、緩いとみるのか。(そもそも中国の制度は排出枠が期中に変更になるなど、独自すぎるルールのようですが)。一時期ほど、排出量取引が注目されなくなりましたが、じわじわと広がっている印象は受けました

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