【音声解説】大混乱の「ウッドショック」、日本の木材業界が最も危惧すること

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11回目は「大混乱の『ウッドショック』、日本の木材業界が最も危惧すること」について東京支社編集部の成田記者が解説します。紹介した記事と合わせて音声配信をお楽しみください。
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国産代替・情報共有で対応

2021年に入って深刻化した住宅用輸入木材の不足と価格高騰が長期化の様相だ。業界では90年代、06年頃に続く「第3次ウッドショック」として懸念を強めている。米国で経済政策に伴い住宅需要が急増したほか、中国経済の急回復で木材需要が拡大。主要木材産地の北米・欧州から日本に木材が回ってこない状況に陥っている。一部を国産木材に代替する動きもあるが、すべてを補うのは不可能。今後、全国の地場や中小工務店への影響は必至とみられる。(成田麻珠、大城麻木乃)

売る商品ない! 米中需要増、欧州に飛び火

「仕事も増えていないが、仕事がない以上に(売る)品物がない」―。木材問屋の美濃佐商店(東京都江東区)の渡辺義秋社長は異常な事態に危機感を隠せない。米業界紙のランダム・レングスによれば、米国製材指標である針葉樹製材総合価格は5月に1500ドルを突破し、前年同月比3倍以上に跳ね上がった。住宅需要は旺盛だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で製材業者の稼働率が低下し輸送も停滞。木材の供給・物流量が追いつかない状況だ。受給の逼迫(ひっぱく)が欧州材にも飛び火し、市況の高騰とともに輸出が米国にシフトするなど、木材市場は世界規模で混乱している。

また、いち早くコロナ影響を払拭(ふっしょく)し、経済回復を果たした中国での木材需要も大幅に増えている。同国は建設型枠向けや内装用などに木材を大量に使用しており、国内材だけではまかなえず輸入材の採用を拡大している。

世界中で木材が取り合いになる中、住宅用木材の輸入依存度が高い欧州産について、木材専門商社の物林(東京都江東区)の淡中(たんなか)克己社長は「(米中の)旺盛な需要は欧州材にも影響。(輸送での)タイムラグがある日本は不利」と分析。日本への供給が絞られる状況を説明する。

林野庁によれば、製材輸入量は20年8月−21年1月で、毎月15%以上減少(前年同月比)し、最大で30%以上の落ち込みを記録。淡中社長は「年内入着分については現状からの脱出は難しいだろう」とウッドショックの長期化を懸念する。

大手住宅、早めに確保

この状況に対して、国内の大手住宅メーカーはいち早く木材を確保したり、大量調達でコスト増を吸収したりと対策を推進。木造枠組み壁工法(ツーバイフォー=2×4)住宅最大手の三井ホームは「年間でまとめ買いしていたため、現状で大きな影響はない。数カ月先まで手当てできている」(広報)としている。

今後、調達コストの増加や構造材不足などに苦しむのは、地場や中小の工務店・ビルダーだ。LIXILの瀬戸欣哉社長は4月30日の決算会見で「6―7月に小規模の工務店で木材不足の問題が顕在化する懸念がある」と指摘した。また、2×4を手がける高橋木箱製作所(東京都葛飾区)の嶋田正専務は「こうした事態は予想されてきたことで、(事業への)影響は避けられない」という。

事態の緩和に向け、輸入材から国産材へ代替する動きがある。東京木材問屋協同組合(同江東区)によれば4月の国産材構造材は引き合いが強くなっており、製品価格はこの1カ月で各種1万円以上の値上げとなった。輸入材の値上げに牽引(けんいん)されるように国産材の価格も上昇している。しかし、急激に供給量を増やすことはほぼ不可能なため、国産材の代替のみでウッドショックを乗り越えることは困難なのが実情だ。

地域業者間で供給網「有事の時に連携できる」

近年、中高層ビル向けなどに国産材の活用が広まる中、長谷川萬治商店(同江東区)の長谷川泰治副社長は「今回のウッドショックの影響で木材に対する信用の失墜を1番危惧している」ともらす。木材は供給の安定しない材と認識されかねないからだ。日本の木材業界が今後も国産材の活用を維持するためには、「地域の工務店や製材業者、材木店などが連携してサプライチェーン(供給網)を構築するべきだ」(長谷川副社長)と強調する。

日本三大人工美林の一つ「天竜の森林」

実際に2年前からそうした取り組みが始まっている。日本三大人工美林がある静岡県浜松市内では工務店、プレカット工場、製材業者、森林組合などが「ジャパン・ウッド・プロジェクト」を立ち上げた。月に1度会合を開き、住宅の受注スケジュールや供給側の木材の在庫状況などを共有している。木材はさまざまな種類とサイズがあるが、地場産だけで造れる住宅の設計ルールに統一したことで無駄のない生産ができるという。同プロジェクトは20年度にグッドデザイン賞を受賞している。

プロジェクトメンバーの鈴三材木店(浜松市浜北区)の鈴木諭社長は「ストックを抱えるリスクはあるが、情報が“見える化”できるメリットの方が大きい」と話す。同社は事業の半分を輸入材が占めるため今回の事態に「影響はある」としながらも、プロジェクトが「(ダメージの)かなりの部分を補完できそうだ」という。目先の市場の混乱については影響は避けられないものの、「人は有事の時に連携できる」と鈴木社長。長期的な視野に立てば、業界再編のきっかけにもなりそうだ。

日本とウッドショック

高度成長期→輸入材依存 90年代→世界で伐採制限

日本が建築向けの木材を輸入材に依存するようになったのは、高度経済成長期に生じた木材需要の拡大に国産材だけで対応しきれなかったことにある。輸入自由化となり、国産材に比べて安く大量に供給できた輸入材は、次第に木材供給の主体に替わった。

90年代になると国連環境開発会議(地球サミット)の開催など、環境問題に対する国際的な意識の高まりから世界各国で森林の伐採制限が設けられ、第1次ウッドショックが起きた。さらに06年頃には新興国や中国で木材・建材の需要が伸びたことで産地は出荷先を転換し、日本向けの価格も上昇した。足元ではこれらに準ずる価格高騰となっている。

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