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15時50分に打ち上げ!H2Aロケット

商業衛星の5割打ち上げ可能に
15時50分に打ち上げ!H2Aロケット

打ち上げ!(ユーチューブ公式ライブ中継より)



 三菱重工業宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、大手衛星オペレーターのカナダ・テレサットの商業通信衛星「テルスター12バンテージ」を24日15時50分に種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から、国産ロケット「H2A」29号機で打ち上げた。三菱重工業が商業目的の衛星を単独で打ち上げるのは今回が初めて。これを手始めに海外からの商業衛星の受注拡大を狙う。

 三菱重工業は商業衛星や政府衛星を輸送するH2Aの打ち上げサービスを2007年に始めた。H2Aはこれまでに28機中27機の打ち上げに成功している。ロケットの性能や打ち上げの設備など日本の技術に対する信頼性は高い。打ち上げの執行責任者である三菱重工業の二村幸基執行役員フェローは「通信衛星業界第4位のテレサットの衛星を打ち上げれば業界での認知度が上がる。今後の営業に弾みがつく」と打ち上げ成功に期待する。

 今回の衛星の打ち上げには、ロケットの長時間飛行技術や2段エンジンの再々着火技術などの新技術を盛り込んでいる。衛星を静止軌道に乗せるには、地球に近い地点と静止軌道とを結ぶ「静止遷移軌道(GTO)」にロケットを乗せ、その後GTO上でロケットと衛星を切り離す。

 29号機はGTO上で衛星をロケットと一緒に運航させ、衛星自身が行っていた軌道変換や運航などの一部をロケットに担わせた。静止軌道に乗るまでに衛星が使う燃料を減らし、衛星の寿命を数年程度伸ばせる。またロケット性能の向上で取り扱える商業衛星の範囲を従来の7%から50%に拡大した。

 H2Aは競合ロケットの登場による競争力の低下などの課題を抱えている。今回の打ち上げで、商業衛星打ち上げ市場に対応した機体の存在をアピールすることは、日本の国際競争力を示す上で重要だ。さらにこうした技術開発の取り組みが、将来のH3などの次世代基幹ロケットの開発につながっていくと期待される。
日刊工業新聞2015年11月2日 科学技術・大学面記事に加筆
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 ドラマ「下町ロケット」で話題の国産ロケット。欧州のアリアン5や、最近失敗が相次いだロシアのプロトンロケットと比べると、まだまだH2AやH2Bロケットは「国内需要=官需」向けに作られている感が強くあります。  今回の商業衛星打ち上げをテコに海外受注が増えていけば理想的ですが、限られた衛星市場を取り込むには、やはり現在開発中の「H3」の動向がカギになってきます。

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