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国内初の商業衛星、今日打ち上げ!

海外からの受注拡大を狙う。新型基幹ロケット「H3」の開発にも生きてくる
国内初の商業衛星、今日打ち上げ!

14年12月に打ち上げたH2Aロケット26号機(JAXA提供)

 いよいよ国内初の商業衛星が打ち上げられる―。三菱重工業宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、大手衛星オペレーター(衛星運用事業者)のカナダ・テレサットの商業通信衛星「テルスター12バンテージ」を24日に種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げる。それを運ぶのは高度化を施したH2Aロケット29号機。打ち上げの成功で商業衛星の海外からの受注拡大を狙う。

 商業用衛星打ち上げの世界のシェアはロシアのプロトンが約半分、欧アリアンスペースが3割を占める。さらに米宇宙ベンチャーのスペースXも加わり、低価格ロケット輸送サービスによる、激しい価格競争を繰り広げている。

 三菱重工が製造するH2Aは、打ち上げの成功率と定められた日時に打ち上げを行った割合「オンタイム打ち上げ率」が共に90%を超え、世界最高水準の信頼性を誇る。二村幸基執行役員フェローは「業界大手のテレサットの衛星を打ち上げることで認知度が上がり、今後の営業に弾みがつく」と期待する。

 各国による主力ロケットの新機種の開発や、設備の老朽化による宇宙開発予算の圧迫など、H2Aは国際競争力の低下の危機にさらされている。

 この課題を解決するため、29号機からはロケット性能を向上し、取り扱える商業衛星の範囲を従来の全体の7%から50%に広げた。

 こうした技術開発は厳しい受注競争を勝ち抜く強みとなるだけでなく、打ち上げコストがH2Aの約半分の50億円と言われる新型基幹ロケット「H3」の開発にも生きてくるだろう。
(文=冨井哲雄)

「H3」の機体構成はこれだ!


日刊工業新聞2015年7月9日付


 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8日、2020年度に打ち上げを目指す新型基幹ロケット「H3」について、機体構成を確定したと発表した。全長は約63メートル、衛星搭載能力は静止遷移軌道への投入能力で6・5トン以上となり、現在主力の「H2A」ロケットの1・3―1・5倍に増強。打ち上げコストは固体ロケットブースターなしの場合でH2Aの半額の50億円程度とし、衛星打ち上げ輸送ビジネスで国際競争力を高める。

 JAXAによると、搭載する衛星の大きさに応じて、新型1段エンジンを2機あるいは3機に切り替えられる。固体ロケットブースターはH2Aの改良で、0本、2本、4本と可変。2段エンジンもH2Aを改良し、1機搭載する。例えば、固体ロケットブースターなしの場合、太陽同期軌道への打ち上げ能力は4トン以上としている。
日刊工業新聞2015年11月23日3面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
打ち上げ時間が午後3時23分に決まったそうだ。ネットでも生中継するそうで、打ち上げ成功を願いたい。

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