【革新!温暖化対策#04】宇宙太陽光発電の実用化、30-40年代にも
新たなロードマップを16年度内をめどに策定
宇宙太陽光発電(SSPS)は、将来のエネルギー供給源として期待されるシステムだ。地上3万6000キロメートル上空の静止軌道上に、太陽電池と送電パネルが付いた衛星を打ち上げる。太陽エネルギーで発電し、その電気をマイクロ波などで地上に設置した受電アンテナに送る。昼夜や天候を問わず安定的に電力供給が可能。太陽光の利用効率は地上の約10倍という。運用時は二酸化炭素を排出せず地球温暖化対策としても有効。2030年代-40年代の実用化を目指している。
研究の始まりは、米ピーター・グレイザー博士が1968年にマイクロ波による送電を提案したことだ。日本では90年代に調査検討が進み、2000年代に本格的な研究が始まった。
14年度までの6年間では、経済産業省の事業としてSSPS実現のカギとなるマイクロ波による電力伝送技術を実証。約50メートル先に1・8キロワットを送り、340ワット取り出せることなどを確認した。ただ、受電部、送電部とも電力ロスが大きく現状の効率は4割程度。宇宙システム開発利用推進機構技術開発本部の中村修治担当部長は、「宇宙太陽光の実現には効率を8割まで上げることが必要」と指摘する。
一方、より大きな課題として指摘されるのが、宇宙空間に材料を運ぶための輸送費だ。原子力発電所1機分にあたる100万キロワット級の発電所を構築する場合、システムは2キロメートル四方に及ぶ。現在の輸送技術で試算すると、その費用は数兆円に上り、実用化するには50分の1くらいに圧縮する必要があるという。宇宙空間にキロメートル級の大規模施設を整備した経験はなく、それも実現する上での課題と言える。
それでも、宇宙太陽光に取り組む意義を主張する声はある。三菱総合研究所の長山博幸主席研究員は、「日本はエネルギー資源が乏しい。それを技術的に解決する手段の一つがSSPSだ。技術立国として挑戦する価値があるのではないか」と訴える。宇宙システム開発利用推進研究機構では実現に向けた新たなロードマップを16年度内をめどに策定する。
(この項おわり)
研究の始まりは、米ピーター・グレイザー博士が1968年にマイクロ波による送電を提案したことだ。日本では90年代に調査検討が進み、2000年代に本格的な研究が始まった。
14年度までの6年間では、経済産業省の事業としてSSPS実現のカギとなるマイクロ波による電力伝送技術を実証。約50メートル先に1・8キロワットを送り、340ワット取り出せることなどを確認した。ただ、受電部、送電部とも電力ロスが大きく現状の効率は4割程度。宇宙システム開発利用推進機構技術開発本部の中村修治担当部長は、「宇宙太陽光の実現には効率を8割まで上げることが必要」と指摘する。
一方、より大きな課題として指摘されるのが、宇宙空間に材料を運ぶための輸送費だ。原子力発電所1機分にあたる100万キロワット級の発電所を構築する場合、システムは2キロメートル四方に及ぶ。現在の輸送技術で試算すると、その費用は数兆円に上り、実用化するには50分の1くらいに圧縮する必要があるという。宇宙空間にキロメートル級の大規模施設を整備した経験はなく、それも実現する上での課題と言える。
それでも、宇宙太陽光に取り組む意義を主張する声はある。三菱総合研究所の長山博幸主席研究員は、「日本はエネルギー資源が乏しい。それを技術的に解決する手段の一つがSSPSだ。技術立国として挑戦する価値があるのではないか」と訴える。宇宙システム開発利用推進研究機構では実現に向けた新たなロードマップを16年度内をめどに策定する。
(この項おわり)
日刊工業新聞2015年11月13日「創刊100周年特別号」より