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令和おじさんは「昭和のお父さん」?「スガ総理」に直撃してみた

令和おじさんは「昭和のお父さん」?「スガ総理」に直撃してみた

「スガ総理」こと、ザ・ニュースペーパーの山本天心さん

菅義偉首相の就任から約7カ月が過ぎた。コロナ禍の対応に追われ、身内の不祥事も生じるなど会見時の雰囲気やテレビ画面越しには疲れているようにも見える。そんな「令和おじさん」を官房長官時代からまねる「スガ総理」こと、コント集団ザ・ニュースペーパーの山本天心さんに最近の様子を聞いた。(聞き手=高田圭介)

-最近の菅首相をどう見てますか。
「就任当初と舞台の反応が極端に違う。毎回舞台で調査をしているが、世論調査と同じような支持率の割合で手を挙げる。東京五輪・パラリンピックの開催是非も同様だ。国会でも面と向かって答弁していた安倍前首相と比べて土俵に立たない印象も抱く。コロナによる時代の背景もあるが社会風刺をする立場として叩きづらいし、お客さんも笑いづらいと思う。政権発足当初は居丈高で今までの手腕を発揮する姿も見えたが、3度目の緊急事態宣言を発出した会見では謝るようになった。本人の立場になると政治家として『命を取るか経済を取るか』になるだろうが、さすがに不憫に見える」

-官房長官時代との違いを感じる部分は。
「政権発足時は官房長官か首相がどちらの立場かわからない時すらあった。官房長官時代はムキになる姿もあったが、身内のスキャンダルも出てさすがに謙虚になった気がする。もともと話術が巧みでないし、本人は相当苦労しているだろうが首相になってからは多くを語らない昭和のお父さんのようにも見える」

-菅政権が続く要因はどんな部分にあると思いますか。
「野党はこれだけ政権を叩くチャンスなのにだらしない。安倍政権が約7年8カ月続いた要因も野党にあると思っている。民主党が政権を握っていた時には夢のような話をしていたが、『素人の政治家ではダメだ』と国民も気づいた。野党に政権を任せられないのはあの時の怖さにあるんじゃないか。河井さんや吉川さんみたいな金銭問題は脈々と続く自民党のお家芸なのに、安倍前政権はずっと選挙に勝ち続けてきた。世論がわからないし、日本国民って忘れやすいんだなとも感じる」

-発足当初と比べて菅首相の支持率が伸び悩む原因は。
「例えば河野さんは会見中もワンフレーズで場が和むことがあるが、菅さん自身は真面目過ぎるところがある。冗談の返しを少しでもうまくやれば、支持率は5ポイント上がると思う(笑)。官房長官時代から力技で切り抜けていたが、最近はさすがに通じなくなってきた。ニコニコ動画で『こんにちは。ガースーです』と自己紹介して叩かれた時があった。個人的には『ネタになる、やったぁ』と思ったが、本人にはトラウマになったのかもしれない。安倍さんは言葉巧みに乗り越える部分もあったが、菅さんは官房長官時代から表向きに冗談を口にする下地がなかった。実際本人はシャレが通じると聞く。柔和な部分や庶民目線な部分がワイドショーとかでも取り上げられれば見方も変わるし、もう3ポイントは支持率は上がる(笑)」

「スガ総理」だけでなくモノマネのレパートリーは幅広い

-ものまねを通じた菅首相らしさとは。
「動画をすり切れるほど見たが、正直言って特徴を捉えづらい。いろいろ研究したが、わずかに感じ取れるなまりやフレーズで抑揚を付けて似せるしかなくて悩んだ。似てるか似てないかは本人の核となる部分を押さえていれば自然とその人っぽくなる。結果的に特徴のなさを私自身の話し方で通すほうが一番いいんじゃないかと思うようになった」

-コロナ禍で演劇業界もかなり環境が変化したかと思います。
「この1年考えられない、信じられないことばかりで仕事の9割がキャンセルになった。3度目の緊急事態宣言が出たが、急に公演が延期や中止になることに驚かなくなった時代も恐ろしい。ザ・ニュースペーパーは毎年全国の主要都市で公演しているが、この1年はできなくなった。やっと先日札幌でできたが、お客さんが前のめりになる熱がマスク越しでもわかった。そんな雰囲気を感じ取ると、笑いって生活必需品なんだなと思う」

-今後の政権の行方をどう見ますか。
「舞台中に『支持率上昇に悩んでいます』と前振りをした上で『来月給付金を差し上げます』と言うと、ほとんどが支持に回る。極端な話だがお金を出すと支持率は上がるし、国民はお金に目が向くと気づいた。選挙の時に未来のことを訴える人もいるが、国民自身も税金や身近なものに関心を寄せる。『お金をくれるイコールいい政治』となることへのもの寂しさも覚える」

-最後に舞台人としての思いを。
「昨年持続化給付金の支援を受けたが、それから政府から助けてもらっていない。正直、飲食店がうらやましいと感じる。これから助けてくれるのだろうかと不安にもなる。不満や鬱憤(うっぷん)が溜まるご時世だからこそ、世の中には笑いによる『ガースー抜き』が必要だ。そのためにも我々の舞台に足を運んでほしい」

菅さんといえば「令和おじさん」
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日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
カーボンニュートラルやデジタル化を政権の柱に打ち出した就任当初、霞が関の官僚の中には「もしかしたら今までの政権と違うのでは」と期待の声もありました。半年ちょっとで結果を出すのは難しいのかもしれませんが、米国のように4年の任期があるとしたら後世にどんな足跡を残してくれるのでしょうか。インタビュー中そんな思いが巡りました。 ちなみに田原総一朗さんや河野行革担当大臣のものまねも見せてくれましたが、インタビューを忘れて大笑いしてしまいました。ザ・ニュースペーパーの皆さんは7月に東京・有楽町で公演予定です。社会風刺は時代を映す鏡のような役割があると思いますが、山本さんがおっしゃるように「ガースー抜き」の意味で足を運んでみてはいかがでしょうか。

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