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COP21迫る。産業革命後の気温上昇を抑える枠組みを作れるか

官民連携で日本のエネルギー技術を世界規模で
 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の第21回締約国会議(COP21)が30日からパリで開かれる。先進国に温室効果ガス排出削減を義務づけた京都議定書(1997年、COP3)に代わり20年以降、すべての国が参加する新たな法的枠組みの採択を目指す。同時多発テロで揺れるパリだが、フランス政府は翌日にCOPの開催を明言した。テロに屈しない姿勢を示すとともに、地球温暖化も先送りできない緊急課題であるという認識からだ。地球温暖化が世界共通のリスクであることに、もはや異論はない。日本にも、地球市民としての自覚と行動が問われる。

 自然現象による「天災」と、人為的な原因による「人災」。天災の対義語として人災という言葉が作られたが、地球温暖化は両者の間で、要因が入り組んだ対処の難しい境界領域を広げている。異常気象による甚大な災害は端的な事例。その一方で”温暖化前線“とも例えられる地球上の平均気温線が、年間数キロメートルずつ高緯度方向へ動き、暮らしや生態系にじわじわと影響を与えている。

 気候変動の科学的知見をまとめる国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は14年秋、第5次評価報告書で温暖化の要因は人為的である可能性が極めて高いことを指摘した。気候変動による被害を軽減するため気温上昇を産業革命前に比べ2度C未満に抑えるには、温室効果ガスの排出を50年までに10年比で40―70%減、21世紀末までにゼロかマイナスにする必要があると推計した。

 これまでのCOPは、先進国が大量の温室効果ガスを排出して経済成長した経緯から、途上国との間に深い溝があった。だが、経済発展に伴い途上国の温室効果ガス排出量が急増。いわゆる新興国では大気汚染などの公害も深刻になり、先進国と同じ道を歩み出している。小島嶼(とうしょ)では海面上昇による被害も現実となった。

 地球温暖化は経済活動と密接にかかわるグローバルな問題だ。かつてのように、途上国側が先進国の責任だけを追求する状況ではなくなった。新たな枠組みづくりで合意したのは11年のCOP17(南アフリカ・ダーバン)。時間はかかったが、対立の構図は解けつつある。

 丸川珠代環境相と経団連の榊原定征会長は懇談で、COP21に向け「国内で温暖化対策を進めることが議論で存在感を示す重要な鍵」という意見で一致した。官民連携で日本のリーダーシップを示す時がきた。

 ※日刊工業新聞で「COP21日本の役割」を連載中

ファシリテーター・永里善彦氏の見方


 97年12月京都開催のCOP3は、削減義務をトップダウン型で決定し、義務の課された国の温室効果ガス排出量の総量は世界全体の58%、これに米国が批准しなかったため総量は僅か34%しかカバーしなかった。その結果、約束期間終了時点12年のCO2排出量は97年の227億トンから317億トンに増加した。
 (続きはコメント欄で)
日刊工業新聞2015年11月19日1面
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
 これを反省し今回のCOP21は「全ての国が参加する公平かつ実効的な枠組み」を採択し、各国がボトムアップ型で自己申告し実行するプレッジ&レヴュー方式にした。経団連の「環境自主行動計画」に倣ったのだ。今年10月までに削減目標を提出した国の総量は世界の排出量の87%をカバーする。それでも産業革命後の気温上昇を2℃未満に抑えることは困難とされる。日本は再生エネ、原子力を考慮したエネルギーミックスで極力温室効果ガスを抑えるとともに、官民連携で省エネを含む優れた日本のエネルギー技術を世界規模で展開し温室効果ガス削減に貢献すべきである。

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