【連載】挑戦する地方ベンチャー No.5 プリンシプル(前編)

「ワンコインセキュリティー」で誰もが安全な街を

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**常識覆す料金設定
 プリンシプル社長の原田宏人氏は、ワンコインランチならぬ「ワンコインセキュリティー」を提供する。セキュリティーが持つ、堅く富裕者向けサービスというイメージを、誰もが身近に利用できるものに変えた。1人暮らしの学生や女性、ファミリー層から申し込みが増えている。経営理念である「大切な人が安心して暮らすことの出来るまちをつくる」を、福岡の地から実現する。

 原田氏が提供するホームセキュリティーサービスは、なんと月額500円。仕組みはマグネットセンサーを玄関扉やベランダの窓枠部分に設置。侵入者によってセンサーが離れると警告音が鳴るシンプルな構造だ。その後、登録した連絡先に家のネット環境を利用してアプリやメールによって異常の発生を知らせ、本人は警備会社に出動を要請するなどの対応が取れる。前後半の連載を通して、事業を始めたきっかけや低価格で提供できる秘密を探っていく。

兄に負けじと


 経営者の父を持つ原田氏は、5人兄弟の4人目として生まれた。7歳上の兄も東京で飲食店数店舗を経営する。学生時代から起業を志していたのかと思いきや、当人は「起業するつもりは全くなかった」とあっけらかんと笑う。実際に専門学校卒業後は営業職で汗を流し、3年間で7回の転職を経験した。

 起業のきっかけは就職活動で東京在住の兄を訪れた時だ。久しぶりに再会した兄はしばらく会わない間に会社経営をしていた。その時「兄ができるなら自分にもできるはずだ」という思いが芽生えた。その後は起業への思いを胸に抱えつつ、兄のアドバイスもありネット回線や求人広告の営業職に就き、個人だけでなく法人向け営業で結果を出した。

 そして2007年1月、原理・原則の意味を持つ「プリンシプル」を設立。社名には「商売の原理・原則を追求したい」という思いを込めた。ただ原田氏は「響きからかお菓子のプリンに関連する会社かと勘違いされる」と苦笑いする。

子供が生まれ事業アイデア浮かぶ


 起業後は営業時代の延長でネット回線を販売した。代理店として一契約につき数万円の報酬を得た。しかし契約時点で販売先との関係が完結するため「月ごとに収益を受け取るストックビジネスをしたい」との思いがあった。そこで家庭や事業所に設置するウオーターサーバーやデイケアサービスなど、さまざまな事業を発案した。デイケアサービスは事務所を借りる手前まで話が進んだ。

 そんな中でターニングポイントになったのが12年3月の愛娘の誕生だった。ちょうどその頃身近な所で女性が性犯罪被害に巻き込まれたことを知ることになる。それ以来、子供の事故や事件など痛ましいニュースを目にするたびに「子供の将来を案じるようになった」と心境の変化を語る。

 加えて福岡県の性犯罪発生件数に目を向けると、全国でもワーストに近いことがわかった。性犯罪の約半数は建物内で起こり(約半数は強姦)、無施錠が大半の原因だ。一方、日本のホームセキュリティー普及率は2%と低い。初期費用が約10万円で、月額5000円がざらの導入コストが理由の一つだ。

 原田氏の事業は、米国のルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長の「割れ窓理論」を参考にしている。同理論は犯罪が起こりやすい環境下では、犯罪への抵抗感が薄れ、悪影響が人に連鎖していくというものだ。そこでセキュリティーを誰もが気軽に利用でき、普及率を上げることで犯罪が起こりにくい社会にする。こうして生まれたのが初期費用1戸1万4800円、月額500円から利用できる「SMART ROOM SECURITY(スマートルームセキュリティ)」。まさに居住する地域独自の問題から生み出したビジネスだ。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

社会に求められるが事業単体では採算が取れないサービスは、行政や補助金で行うことが多かったが、昨今の起業家はアイデアで社会的課題を解決している。 多くの方が抱える社会的課題について、多くの方が共感し、協力したくなる。その典型的なビジネスモデルがまさに「スマートルームセキュリティ」である。 社長の明確なビジョンが形となり、周りの協力者を巻き込みながら事業が進捗している。 ITだけを活用したものではなく、警備会社と連携することでセキュリティサービスをとしての質を保っていることが有益なサービスのポイントとなる。

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