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「林業用アシストスーツ」実用化へ。山中斜面の歩行を支援

住友林業が17年度末にも。サイバーダインは歩行機能改善向け
「林業用アシストスーツ」実用化へ。山中斜面の歩行を支援

装着者の動きを検知し、太ももを持ち上げるような動きで歩行をサポート(試作機)

 住友林業は林業従事者の歩行を支援する「林業用アシストスーツ」を、2017年度末をめどに実用化する。造林は山中の急斜面を登ったり下ったりしながら歩き回る作業が大半を占める。肉体的な負担が大きく、従事者の高齢化対策や、新しい就労者の定着のためにも負担軽減は大きな課題となっている。15年度末までに斜面を直登する技術を確立し、段階的に複雑な歩行を可能にする。

 試作機は装着者の動きを検知し、太ももを持ち上げるような動きで歩行をサポートする。重量は約15キログラム。重量を接地面に逃がす「竹馬のような」(楢崎達也林業企画グループチームマネージャー)構造になっており、停止時にも装着者が重さを感じることはない。

 実用化に当たってアクティブリンク(奈良市)、国立研究開発法人森林総合研究所(茨城県つくば市)、奈良先端科学技術大学院大学とコンソーシアムを設立した。開発をスタートしたのはおよそ1年前。アクティブリンクが試作機を開発し、森林総研と奈良先端大が取得したデータの分析・評価などを担当。住友林業は現場のニーズを吸い上げつつ開発と実証実験の全体をとりまとめている。

 林業の現場では斜面を横切るような移動が多く、倒木などの障害物も多い。平地の歩行に比べてバランスの維持が難しく、複雑な制御が要求されるが、「難しい条件で動作できれば良い成果になる。究極的には道なき道を歩けるようにしたい」(同)。早期に実用化し、量産化への道筋をつける考えだ。

医療用「HAL」機器承認へ


日刊工業新聞2015年11月13日


 厚生労働省薬事・食品衛生審議会の専門部会が、サイバーダインの装着型ロボット「HAL医療用下肢タイプ」をクラスIIの医療機器として製造販売承認することを了承した。月内には正式に厚労相承認が下りる見込み。同機器を繰り返し使うことで、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄性筋萎縮症(SMA)など神経・筋疾患患者の歩行機能の改善が見込まれる。承認後、保険収載の作業に入る見通し。

 HAL医療用下肢タイプは、装着者(患者)が筋肉を動かそうとして脳から筋肉に神経信号が伝わった時、皮膚表面に現れる微弱な生体電位信号を電極でキャッチする。装着と歩行を繰り返すことで、脳が「歩けた」という感覚を学習していくよう促す仕組みだ。

日刊工業新聞社2015年11月17日1面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
装着型のロボットがじわじわと浸透してきた。市場の形成とともに、日常の作業支援には単純な機構でなるべく安価なものを、高度な技術を使った高価なものは医療といった特殊用途へ、という流れができつつあるように見える。いつかはロボットを身につけることが当たり前になる社会が来るのだろうか。

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