古森なき富士フイルムの「チューニング経営」

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助野健児社長兼COO(左)、後藤禎一次期社長兼CEO(中央)、古森重隆会長兼CEO

「培ったブランド力や財務力などを活用し、多角化を進めてきた。2021年3月期連結決算(米国会計基準)の当期利益は過去最高となる見込みで、新型コロナウイルス感染拡大の業績への影響を可能な限り抑えている」。富士フイルムホールディングス(HD)の古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)はこう胸を張る。コングロマリット・プレミアム(複合企業体ならではの付加価値)の強みが逆境において、発揮された。

再生医療や半導体材料など、多様な事業を展開しているが、助野健児社長は「技術の根はつながっている」と強調する。同社は写真事業で培った精密塗布など12の技術をベースに、事業領域を広げてきた。例えば化粧品には酸化還元制御技術やナノ分散技術を活用している。

特に成長を見込むヘルスケア事業では、M&A(合併・買収)を活用し事業規模を急激に拡大している。抗ウイルス薬「アビガン」を生産する富山化学工業(現富士フイルム富山化学)や、バイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)などの企業をグループに取り込んできた。21年3月末には、日立製作所の画像診断関連事業の買収を完了した。

富士フイルムHDの経営体制は6月に大きく変わる。21年間にわたりトップを務め、写真フィルム市場が急激に縮小後も構造転換で成長をけん引した古森会長兼CEOが退任する。

医療ITなどのメディカルシステム事業を率い、日立の画像診断関連事業買収も主導した後藤禎一取締役が社長兼CEOに就く。ヘルスケア事業をグループの柱に育てる方針を、鮮明に示した。

助野社長は会長兼取締役会議長に就く。「取締役会の役割は従来以上に大切になっている。しっかりとしたガバナンスの達成に向け、議論を活性化していくのが私の役割だ」と説明する。事業ポートフォリオの最適化に向け、常に「体質強化に向けたチューニング」(助野社長)を進めながら成長を目指す。

日刊工業新聞2021年4月12日

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