進むMRJの量産体制づくり

【連載】MRJ 空へ(中)

 「いよいよ航空機産業の礎になるという実感が出てきた」―。三菱航空機(愛知県豊山町)社長の森本浩通はこう期待する。MRJが初飛行を済ませたことで、三菱重工業は全国の工場をフル活用して量産体制の構築に動く。キーワードは「熟練の手作業と、最新鋭システムの融合」だ。

ロボットと「匠の技」


 MRJが初飛行した愛知県営名古屋空港(豊山町)の隣接地。三菱重工がMRJの唯一の量産工場となる「小牧南新工場」を建設中だ。生産ラインが自動で動くU字型の「ムービングライン」を導入。床下のチェーンが1分間に1センチ―数センチメートルの速さで動き、製造中の機体を引っ張る。作業者はラインの上でエンジンや内装品などを取り付ける。

 小牧南新工場から南に30キロメートルほどの臨海部。飛島工場(愛知県飛島村)では主翼と胴体の生産準備が始まっている。主翼と胴体それぞれでラインを設け、自動車の工場でよく見かけるアーム型ロボットを大量に入れる計画だ。一方、狭あい部などの作り込みは機械化が難しく、熟練技能者による「匠(たくみ)の技」に頼る部分もある。

 組み立て以外の工場でも体制作りは加速する。主翼部品を作る三菱重工神戸造船所(神戸市兵庫区)内に新工場を設置するのは旭精機工業。社長の山口央は「17年早々には量産を開始する。期待通りにものを削れるか一連の流れを検証し、”本番“に向かう」と準備万端だ。

中堅・中小もステップアップ


 MRJの生産には多くの中堅・中小企業も「パートナー」として参画。パートナーという言葉の裏には、サプライヤーに「下請けを脱皮してほしい」という三菱重工側の意図もある。MRJの「中胴」などを組み立てる東明工業(愛知県知多市)社長の二ノ宮啓は「いよいよ我々にもバトンが回ってきた」。「後胴」を手がけるエアロ(同弥富市)社長の和田典之は「生産の機械化(自動化)で先行したい」と熱弁を振るう。

 三菱重工松阪工場(三重県松阪市)では、中小企業など10社による”共同工場“が16年秋にも立ち上がる。機械・板金加工といった各社の強みを持ち出しつつ、設備投資のかさむ表面処理、熱処理装置などは共有化。自動車部品メーカーの生産システムも入れ、量産技術を磨き上げる。

 MRJの量産は、これまで各社が手がけてきた米ボーイング機の生産とは別次元の取り組みだ。サプライヤーの事業責任の範囲は拡大し、一部品の加工から生産全体の管理まで求められる。共同工場を運営する航空機部品生産協同組合代表理事の加藤隆司は「(共同生産に)取り組まなければ、航空機産業は日本で生き残れない。何が何でも進める」と決意する。

 航空機産業の生産技術は、他の産業と比べ遅れていると指摘されてきた。しかし、MRJをきっかけに各社が取り組む生産改革の先には、基幹産業としての道筋が見える。

 MRJ量産工場は一般にも開放し、飛行機づくりが間近で見られる構造にするという。MRJの生産を統括する三菱重工執行役員フェローの石川彰彦は「子どもの夢を育む工場にしたい」と目を細める。

(敬称略)
(【連載】MRJ 空へ(下)は19日に配信予定)

日刊工業新聞 2015年11月16日付機械・ロボット・航空機面記事

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
11月18日
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MRJは1機50数億円。年間100機作った場合、5000億円の売上高になると皮算用できます。他の製品がそうであるように、MRJも量産されて初めて日本の航空機産業にメリットをもたらすと思います。

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