日本はロボットの強みどう生かすか。標準化は国益、その歴史は人が紡いでいる

文=三治信一朗(NTTデータ経営研究所)新時代のインターフェースやデータ・プロトコルを抑えよう

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サイバーダインのHAL作業支援用(手前)、HAL介護支援用(奥)がISO13482認証を取得
 ロボットのような新産業分野においては、特に、標準化戦略、知財戦略が重要になる。

 標準化はISO/IECといった国際機関による標準から、JISといった国別で策定される規格、さらには、業界ごとに安全性の水準を定める業界標準といわれるものに分類される。特に、業界標準と国際標準が事業を行う上で重要となる。また、標準と規格を簡単に説明しておくと、おおざっぱに言えば標準とは、決まりを定めることで、それを文書の形で誰がみてもわかるようにしておくことが規格である。

 標準を握ることで業界地図が変わることがある。ある安全にかかわる規格の一部に特定企業のみが有する技術が入っているために、規格には企業名は入らないものの、その規格を守るためには、実質的に排他的に当該企業の製品を購入しなければならないということがある。

 ISOのような、1カ国1票の制度である場合、欧州の国々それぞれが1票の権利を持つため、欧州に地の利があるとされる。また、標準化での会合では、関係国の特定メンバーが議論している関係上、従来から発言し続けているメンバーがある意味で尊敬され、その発言力に左右されることもままある。こうした標準化への二つの取り組みを紹介する。

「ORiN」は産業用の誇るべきプラットフォーム


 一つは、ORiNである。1999年度の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「新規産業支援型国際標準開発事業」に採択され、研究が開始されたプロジェクトであり、既に10年以上の実績が存在し有償のみで1万ライセンスを発行するわが国が世界に誇るべき製造業におけるロボットアプリケーションソフトウエアの標準プラットフォームである。国プロからはじまって、産業用ロボット分野で活用が進んできている。

 欧州のインダストリー4・0をはじめ米国のインダストリアル・インターネットなど、IoT(モノのインターネット)やCPS(サイバー・フィジカル・システム)に注目が集まっているが、機器ごとに異なるインターフェースやデータ・プロトコルの標準化はその必須条件であり、各国は当該分野をその戦略の重要分野として位置づけている。

 日本としても、強みを有する分野へのテコ入れが必要だ。また、生活支援ロボットでは、ISO13482が14年1月に発行された。用語を標準化することからの取り組みであり、これまで足掛け10年近くかかっていることになる。これも、日本の有識者が時に手弁当で、かつ経済産業省、NEDOからの支援も得ながら、着実に進めてきた。標準化は国益となり、その歴史は、人が紡いでいる。
 
三治信一朗(さんじ・しんいちろう)NTTデータ経営研究所 事業戦略コンサルティングユニット 産業戦略チームリーダー シニアマネージャー。2003年(平15)早大院理工学研究科物理学及応用物理学専攻修了、同年三菱総合研究所入社。15年NTTデータ経営研究所に入社し産業戦略チームリーダー。

日刊工業新聞2015年11月13日ロボット面

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

どの国が主導で標準化を進めるか、という視点は競争力強化には不可欠だ。一方で国内での競争関係があり、なかなか業界として一枚岩になれないという指摘も聞く。ますますロボットがネットワーク化する将来では、より標準化の重要性は増す。日本がロボットで強い立場を示している今こそ、取り組みをさらに加速させる必要がある。その中でISO13482は一つの成果だ。今後は規格をどう普及させ、世界標準にしていくかが課題になる。

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