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パリ同時多発テロ、欧州経済さらに不透明に

低迷するフランス経済、EU各国に試練続く
パリ同時多発テロ、欧州経済さらに不透明に

仏経済は苦境が続く(ルーブルピラミッド)

 フランス・パリでの大規模な同時多発テロによって、フランスだけでなく欧州経済の先行きがさらに不透明になった。従来から仏経済は低迷し、オランド政権も経済政策で迷走が続いている。最近ではマクロン経済相が、ルノーのカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)に対し、日産自動車との完全合併へ圧力をかけていることが明らかになったほか、原子力設備大手のアレバもリストラを推進中。経営不振に陥っていた通信機器大手のアルカテル・ルーセントはフィンランド・ノキアが買収することになった。

 来年、緩やかな成長を期待していた欧州経済。しかしテロのリスクはさらに高まっている。国連は、中東やアフリカなどから欧州に渡った難民や移民が、今年80万人を超えたことを明らかにした。これはすでに去年1年間の4倍にあたる数字。冬にかけさらに流入が増える可能性がある。

 下記の欧州委員会の経済予測はさらに下方修正されそうだ。

2016年のGDP成長率は2.0%、欧州委が秋季経済予測


日刊工業新聞社2015年11月13日付[通商弘報(ジェトロ)]より


 欧州委員会は11月5日、EUの2016年の実質GDP成長率を2.0%、2017年を2.1%とする秋季経済予測を発表した。EU経済は、中国など新興国経済の低成長など外的な要因もあって緩やかなペースとなるが、2016年も景気回復の持続を見込んでいる。他方で、この予測に織り込まれていないリスク要素として、米国の利上げと中国経済のハードランディングを挙げた。

<原油・ユーロ安や金融緩和に支えられ緩やかに成長持続>

 欧州委が11月5日に発表した秋季経済予測(注)によると、EUの2016年の実質GDP成長率は2.0%の見通しで、前回(5月発表の春季経済予測:2.1%)から0.1ポイント下方修正した。また、2017年については2.1%と緩やかながら成長を続けるとみている。

 ユーロ圏などについても同様で、2016年の見通しは、前回予測(1.9%)から0.1ポイント下方修正し1.8%、2017年は1.9%とした。

 欧州委のバルディス・ドムブロフスキス副委員長(兼ユーロ・社会的対話担当委員)は「現在の成長は主に原油安・ユーロ安・(欧州中央銀行の)金融緩和政策など流動的な要因に支えられている」としながらも、「ユーロ圏経済は世界的な貿易の減速などの外的要因に対して力強さを示した」と総括した。

 同副委員長は、ユーロ圏経済に対して想定されるリスク要素として、世界的な景気減速、周辺地域(ウクライナ、シリアなどの政治情勢)との緊張関係、難民危機への対応を挙げた。

 一方、今回の経済予測に織り込まれていないリスク要素として、米国の金融当局による利上げ実施と中国経済のハードランディングに注意を要するとした。特に米国の利上げ観測に対しては、その他のリスク要素を上回る混乱を金融市場にもたらすとしており、間接的な表現ではあるものの、米金融当局を牽制する格好となっている。

 また、ピエール・モスコビシ委員(経済金融問題・税制・関税同盟担当)も、ユーロ圏経済は回復軌道に乗っているとの見方を示しつつ、「ユーロ圏内でも景気回復に温度差がある」ことを問題点として指摘し、「回復に向けた経済収れんのスピードが不十分だ」と述べた。

 2016年の実質GDP成長率見通しをみると、アイルランド4.5%、ルーマニア4.1%、マルタ3.6%、ポーランド3.5%、ルクセンブルク3.2%など安定成長の見込まれる国がある半面、ギリシャはマイナス1.3%などと温度差が顕著だ。

<労働市場改革の影響から脱し失業率も改善傾向>

 失業率については、欧州債務危機が深刻な時期にアイルランド、スペイン、イタリアなどで進んだ労働市場改革の反動もあり、改善傾向が鮮明となっている。経済再建が順調に進むアイルランドでは、2012年のピーク時に14.7%まで上昇した失業率が2016年には8.7%、2017年には7.9%と着実に低下する見通しだ。

 また、ギリシャと並びユーロ圏で失業率が突出したスペインも、2013年には26.1%まで上昇したが、2016年に20.5%、2017年には19.0%と回復基調は鮮明だ。ユーロ圏全体でも2016年10.6%、2017年10.3%と、ピークの2013年(12.0%)と比較して改善の見通しとなっている。ギリシャも2016年25.8%、2017年は24.4%と緩やかな改善が続くが、それでもユーロ圏で突出した高さだ。

<ギリシャをはじめ財政再建は道半ば>

 財政状況をみると、欧州債務危機の時期に放漫財政との批判を浴びた財政赤字(GDP比)も、ギリシャ(2013年12.4%)が2016年に3.6%、2017年には2.2%と財政再建の適切な履行を前提とした予測となった。また、スペイン(2012年10.4%)も2016年3.6%、2017年2.6%、スロベニア(2013年15.0%)も2016年2.4%、2017年2.0%と順調な財政再建をうかがわせる見通しとなっている。

 今回の予測で2016年に財政赤字がGDP比3.0%を上回るのは、ギリシャ、スペインにフランス(3.4%)とクロアチア(4.7%)を加えた4ヵ国で、2015年時点の7ヵ国から3ヵ国減少する。

 このように、単年度ベースの財政健全化の動きは顕著だが、公的債務残高(2016年時点、GDP比)をみると、ギリシャの199.7%を筆頭に、イタリア(132.2%)、ポルトガル(124.7%)、ベルギー(107.1%)、スペイン(101.3%)など、依然として財政再建は道半ばであることを印象付ける見通しとなった。

(注)欧州委は冬季(2月)、春季(5月)、秋季(11月)の年3回、経済予測を発表している。
(文=ブリュッセル事務所・前田篤穂)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
サンドニの競技場に何度も足を運んだ身(もちろんパリの街中もそうだが)としては衝撃と怒りと悲しみに覆われている。10月もパリに行こうと考えていたのだが。すでに各国首脳はメッセージを出し始めているが、15日からトルコで開催されるG20や月末開催予定のCOP21でどのような行動と言葉が出てくるか。報復の連鎖にならないよう。

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