ニュースイッチ

《新幹線に沸く北陸#02》お祭り「いつまで続くのか心配」

リピーター確保がカギ 。「富山湾鮨」などブランド化戦略へ
《新幹線に沸く北陸#02》お祭り「いつまで続くのか心配」

富山県内の約60店舗のすし店が提供している「富山湾鮨」

 北陸新幹線の開業効果はJRだけでなく、旅行会社や宿泊施設、観光地などにも波及している。JTBでは首都圏発北陸向けのツアーの販売人員が、7―9月で前年同期比約3・2倍、10―12月で同約4倍と好調だ。

 金沢を代表する観光地である金沢城と兼六園も大幅に入場者数が増えた。4―9月の金沢城公園の入場者数は、同81・4%増の181万4000人、兼六園の入場者数は同46・5%増の172万5200人。金沢城公園は2014年度の入場者数が136万人で、15年は5カ月間で前年を上回った。石川県金沢城・兼六園管理事務所の猿田秀一所長は、「平日でも例年の休日並みのにぎわいで、新幹線効果は大きい」と話す。

 JTBでは10月から、専用の地図にペン型の機器を当てると、観光地の音声ガイドが流れる「音声ガイドペン」を金沢と高山のラウンジに導入した。音声ガイドペンは、JTBが独自に開発した観光支援ツール。添乗員がいなくても、観光地の説明を受けることが可能で、JTBの利用者は無料でレンタルできる。JTBは新幹線開業で盛り上がる北陸に先行して導入した。

 新幹線効果に沸く北陸だが、金沢の老舗料亭「大友楼」の大友敦子さんは「新幹線が開業した直後は周辺もお祭りのように人がいたが、これがいつまで続くのか心配」と話す。旅行業界などでは、新幹線の開業効果は6カ月間というのが定説。効果を持続するには、北陸を再訪問する「リピーター」の獲得が課題になる。

 富山県では富山湾の新鮮な魚介類を誘客の目玉としており、県内の約60店舗のすし店と連携し、「富山湾鮨」としてブランド化している。富山湾鮨は富山湾で捕れた魚と富山県産のおコメを使うことが要件となっているが、メニューは各店舗に任せているため、一部に富山湾では捕れないウニを提供する事例もあり、その徹底が課題。富山県は抜き打ちで店舗を訪問して品質をチェックするなど、ブランドの維持に神経を使っている。

 新幹線開通を機に来てもらった観光客に、いかに北陸の魅力を分かってもらうか―。一時のブームで終わらせないためには、富山県のような草の根的取り組みも重要になる。
日刊工業新聞社2015年10月29日生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
新幹線が開業した3月は、金沢駅周辺がまるで銀座のように人であふれかえっていたとか。今後は一時のブームで終わらせないための取り組みが必要になります。

編集部のおすすめ