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東大工学系研究科が新制度、“ガツン”とやった出産・育児支援の中身

東京大学大学院工学系研究科は4月から、寄付講座などプロジェクト雇用型の特任教員・特任研究員における出産・育児支援で新制度を始める。産前・産後休暇の14週間分を復職後の雇用で延長し、休暇中の人件費を研究科が負担する。夏には育児休業(男性研究者の取得も含む)と合わせ最長6カ月の雇用延長に広げていく計画だ。企業由来など資金が豊富な工学系部局が、女性増に向けて独自支援する姿勢は注目される。

若手の特任教員・研究員は数年間のプロジェクト予算で雇用され、期間内に研究成果をあげて次の雇用を獲得する必要がある。女性研究者が産休を取得するとプロジェクトの進行が遅れたり、代替の支援員を追加予算で雇用したりするため、プロジェクトを運営する研究室には苦しい面がある。女性研究者が居づらく退職するケースがあるほか、復職しても雇用期間終了まで短いため、成果をあげにくい問題がある。

新制度では「(雇用期間の)タイマーを休暇中は止めて、復職後にその分を延長する」(染谷隆夫研究科長)。休暇中に雇用期間が終了した場合も、復職後の雇用延長によって、次の雇用が獲得しやすくなるという。

同大同研究科ではここ数年、助教の数が横ばいの中で女性のみ減少し、特任助教の数が急増する中で女性のみ横ばいと、女性増の目標に逆行していた。

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日刊工業新聞2021年3月8日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
8日の国際女性デーに合わせた、若手女性研究者を元気づけるニュースだ。女性の活躍推進は、男女雇用機会均等法や育児休業法による後押しが効果的で、企業における環境は急激によくなった。制度がしっかりしているため、出産・育児の女性が急増し、「資生堂ショック」のように職場で再調整する必要に迫られるほどだ。それだけに「研究型大学の工学系なら、特任でない助教でも任期付きがほとんど(定年型雇用になっていないため、出産に踏み切りにくい)」という状況に目がくらんだ。そして工学系は「そもそも女性が少なくて増やせない」といってきた。ところがやる気になれば、「外部研究費の間接経費などお金に余裕があるのだから、それを使った女性支援ができるのか!」。東大がガツンとやってくれた。

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