コロナで「スーパードライ」のローマ生産が危機に。アサヒが選んだ「遠隔技術指導」

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遠隔監視の導入によって在宅工程管理が可能に(アサヒGHD茨城工場の生産ライン)
【新たな課題】

新型コロナウイルス感染拡大は食品メーカーに、いかに生産拠点で感染者を出さず、供給責任を果たし続けるか、という新たな課題を突きつけた。本社などのオフィスはテレワークで社員の出社を減らすことができるが、生産現場を無人にすることは難しいからだ。

アサヒグループホールディングス(GHD)は、生産ラインに遠隔監視技術の導入することでこの課題に取り組む構えだ。小路明善社長は「コロナ前から考えていたが、スピードを速める」と、導入の前倒しを示唆する。

豪州子会社のアサヒ・ビバレッジズが先行導入した技術を活用する。同社はラバトン工場で遠隔監視技術を導入し、在宅で生産工程を管理する。こうした手法を生かせば、生産現場の人員を減らし、将来的に複数の生産拠点の工程を1カ所に集約して管理することも可能となる。辺見裕取締役は「遠隔技術を活用し、柔軟で生産効率の高い働き方を目指したい」と話す。

【どう生かすか】

アサヒGHDは今、全社を挙げてデジタル変革(DX)の推進に取り組んでいる。その大きな一歩が、20年4月のバリュークリエーション室の設置だ。ここではDXを活用した商品やサービスの開発に加え、業務の高度化や効率化も重要な課題の一つとなる。人工知能(AI)や仮想現実(VR)などの最新技術が、業務にどのようにいかせるかを検討。辺見取締役は「何年かに1度は必ず大きなリスクに直面する。そこでは技術の活用が武器だ」と指摘する。

危機対応にデジタル技術は欠かせない。だからコロナ禍は、デジタル技術の活用を加速させた。アサヒGHDは20年6月から子会社の伊ビラ・ペローニのローマ工場で「アサヒスーパードライ」の現地生産を開始。通常ならば技術者が現地に入って指導するが、新型コロナで海外渡航が難しくなり、現地とのやりとりを遠隔で行わざるを得なくなった。

【リスクに強く】

遠隔で技術支援を行うためには、東京の本社とローマ工場で製造プロセスを共有しなければならない。そこで活用したのがスマートグラスだ。現地技術者が設備などの状況をスマートグラスを介して東京の技術者に伝え、リアルタイムで指導を受けた。辺見取締役は「現地に行かなくても状況を共有し、遠隔から技術指導できる体制が整った」と話す。

デジタル技術を活用することで、コロナ禍という過去にない危機に直面しながら現地生産を計画通りに始めることができた。アサヒGHDでは今後もDXを加速し、さまざまなリスクに対応する生産体制の強靱(きょうじん)化と働き方改革につなげる構えだ。

日刊工業新聞2021年2月24日

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