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TPP合意でも潜在力が分かった通貨処理機の先駆者とは!?

文=清水秀和(証券アナリスト)グローリーは既存金融だけでなくネット選挙、カジノなどにも可能性
TPP合意でも潜在力が分かった通貨処理機の先駆者とは!?

機械工業デザイン賞を受賞した外貨紙幣識別機「GCF−200」

 環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意で意外なのは、マレーシアなどにATM自由化の付帯事項があったことだ。ATM(現金自動預払機)が当たり前の日本に対して、世界の金融機関ではCD(現金自動支払機)が多い。偽札横行や汚れた紙幣が多く判別する装置の開発コストなどが引き合わないことが理由とされる。

 実際、グローリーは硬貨・紙幣処理機のパイオニアで、事業環境は明るい。強みは1950年に大蔵省造幣局の発注で日本初の硬貨計数機を、53年には金融機関向けに硬貨計算機を開発したこと。硬貨・紙幣処理機の国内のシェアは5割強のトップメーカーである。

 金融・流通業界向けの貨幣処理機に加え、たばこ販売機や各種券売機、パチンコホール向け機器なども手掛ける。特に流通業界向けのレジ釣銭機では国内シェア7割以上の強みを発揮する。

 海外展開も積極的で、12年7月には金融機関向けの貨幣入出金機では世界シェアの約4割を占める英国のタラリス・トプコ社を約800億円で買収した。これにより、日英両社では約6割の世界シェアとなり、今後タラリス社の販売網を活用し、欧米での金融市場向けに製品投入を加速させる。「買収によって売上高は300億円、営業利益25億円の上乗せ効果につながった」(同社)という。

 このほか、ネット選挙運動解禁法案では投票用紙の自動交付機などを手掛ける同社に対して、16年夏の参院選挙により商機への期待が膨らんでいる。さらに、新成長戦略にカジノ解禁検討を盛り込むとの見方が浮上する可能性があるなど、マーケットの話題性もある。

 足元の業績は好調だ。流通・交通市場向け「レジつり銭機」販売が伸長したことに加え、流通市場向け「小型入金機」や警備輸送市場向け「売上金入金機」も更新需要を捉え、好調に推移する。金融市場向け「オープン出納システム」で中小規模店舗向けコンパクトタイプが伸びたほか、窓口用「紙幣硬貨入出金機」の更新需要も旺盛である。

 ただ、主力の海外市場(前期売上高比48%)は、為替差益減少で採算が苦戦しているが、欧州の流通市場向け拡大のための先行投資が実る来期以降は、採算改善効果が期待されそうだ。
 <プロフィル>
 清水秀和=証券アナリスト兼IMSアセットマネジメント社長
 年間約150社を取材し、延べ5000社の取材実績を持つ。成長する技術系製造業の企業発掘を専門としており、身近で分かりやすい解説に定評がある。株式公開予定企業育成の実務経験を生かし、東北大学や日本大学などでベンチャー起業論の講演も多数。
 ※「アナリスト千里眼・成長企業発掘編」を毎週木曜日に日刊工業新聞で連載中
日刊工業新聞2015年11月05日 金融面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
グローリーはモノづくりでも先進的な取り組みをしている。これまで自動化が不可能と考えられていた領域に双腕型産業用ロボットを導入、人とヒト型ロボットが協調して働く多品種少量生産システムを構築した。これにより、自動化率80%を達成し、労働生産性を約5倍に引き上げたという。本社工場内には生産技術の拠点も稼働したばかりで、グローバル展開の裏側にしっかりとコスト競争力をつけているところが強み。

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