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遠隔操作ロボ抱きしめながら会話ーATR、安らぎ演出など研究

通信媒体にー遠隔操作型アンドロイド「テレノイド」、次世代
遠隔操作ロボ抱きしめながら会話ーATR、安らぎ演出など研究

抱き枕型存在感メディアとして発売された「ハグビー」

 遠くにいる恋人や家族との連絡手段が、ロボットの普及で変わるかもしれない。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)では、自然な会話ができる人工知能を登載した対話型ロボットや、遠く離れた人同士のふれあいを可能にする遠隔操作型ロボットの研究を進めている。スマートフォンの普及でテレビ電話などで気軽に対話できるようになったように、次世代コミュニケーションツールとしてロボットの活用が期待されている。
 
 スマホに代わる通信媒体となるため、ロボットに求められるものは何か。カギはロボットの形状にある。ATR石黒浩特別研究所では、通話によって遠くにいる人の存在をより身近に感じられるロボットを“存在感メディア”と命名し、普及に力を入れている。

 その一つが、遠隔操作型アンドロイド「テレノイド」。赤ちゃんのような外見と肌触りのテレノイドを抱き締めながら、対話やスキンシップを体感できる。新たなコミュニケーションの方法としての可能性と効果の提示を狙っている。

 遠隔操作によって音声を発し、さらに赤ちゃんに似た呼吸のリズムや動きを表現できるため、実際に赤ちゃんを抱いているような安らぎを得られるという。すでに高齢者介護施設などで試験的に導入されており、テレノイドによるサービス提供を目的に設立されたテレノイド計画(京都府精華町)が2016年度中に発売する予定だ。

 存在感メディアをより簡素な構造とすることで、一般家庭への普及も目指している。それが京都西川(京都市下京区)や東洋紡STC(大阪市北区)、ヴイストン(大阪市西淀川区)と共同で開発した「ハグビー」。9月初旬から店頭に並んでいる。

 人型の抱き枕のような形で、頭部ホルダーにスマホを収納できる。ハグビーを抱きしめながら通話すれば、通話相手の存在をより身近に感じる効果がある。

 介護施設などでの実証実験では、ストレスに関与している物質「コルチゾール」の減少など、心理的・生理的によい効果が生まれているという。医療や保育の現場で存在感メディアが実際に有効利用できる可能性を示した。

 通信にスキンシップの要素を加えた存在感メディアを、新たなコミュニケーションツールとしてどう定着させていくか。今後の研究開発の動向が一層注目されている。
(文=大阪・川合良典)
日刊工業新聞2015年11月06日 科学技術・大学面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
抱き枕型ロボで相手の存在感を感じられるかは想像できませんが、抱き心地に安らぎは得られそうです。

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