いま注目の「ファインセラミックス」。未来の用途とは?

業界が2050年までの技術ロードマップ策定へ

 日本ファインセラミックス協会は、耐熱性や耐食性などに優れたファインセラミックスについて、2050年までの技術ロードマップを16年11月までに策定する。50年ごろには人口構造をはじめ、デジタル化などによる産業構造の変化、再生可能エネルギーや水素社会の普及など国内外で大きな変革が予想される。こうした変化を踏まえ、企業などが長期的な素材開発や用途開拓を行う際の目安や指針として活用してもらう考えだ。

 東京工業大学応用セラミックス研究所と名古屋工業大学先進セラミックス研究センターと共同でロードマップを策定する。業界団体や調査機関などがまとめた経済、自動車やIT、医療、エネルギー分野などの長期展望の文献を参考にする。

 長期的な社会変化として自動車では4輪ではない形態になる可能性や、水素社会の本格到来、3次元ホログラムなど近未来型の媒体が主流になる可能性なども検討の対象とする。その中でファインセラミックスの潜在需要を模索する。

 年内にたたき台をまとめ、16年から企業や団体へのヒアリングや提携先の米国先進セラミックス協会との意見交換をふまえて作業を進める。16年11月の同協会の30周年記念のイベントで公表する予定だ。

日本ファインセラミックス協会専務理事・矢野友三郎氏


日刊工業新聞2015年10月12日付「主張」


 今やスマートフォンや自動車に欠かせない素材となったファインセラミックス。当協会は70社の会員がおり、世界市場の4割を占める実力を持つ。

 ファインセラミックスの耐熱性や耐食性、機械的強度などは金属や樹脂など他の素材と比べても特に高く、環境配慮の高まりから軽量素材などとして需要が伸びていくと期待される。炭素繊維で世界の先頭を行く東レがセラミックス繊維を開発していることも、注目度の高さを示している。

 ただ、日本と並んで高いシェアを持つ米国の市場は防衛や航空、医療分野を含めて用途のバランスが取れているのに対し、日本市場はスマートフォンや自動車の電子部品向けなど「電磁気・光学用」が7割を占め、偏重ぶりが目立つ。

 他方、コスト競争力に優れる中国製は日本製より品質は落ちるとはいえ、一定の水準に達しており、今後は中国製を積極採用したいと考える電機メーカーもある。日本企業は現状に甘んじるのではなく、攻めの戦略が必要になっている。
 
 今、日本企業に求められているのは従来通り得意のすり合わせ技術で品質を磨いていくだけでなく、顧客の声を聞くことだ。素材産業は製鉄業なら鉄のみ、セラミックスメーカーならセラミックスのみと事業領域を自ら限定する面がある。
 
 だが、顧客が求めているのは素材そのものではなく、「機能」だ。経済産業省が実施したヒアリングでは自動車メーカーは素材産業に対し、垣根を越えた連携によって複合材料や異種材接合を開発し、それぞれの素材の相乗効果を高めていくことを期待している。
 
 セラミックスを炭化ケイ素繊維で強化した航空機用エンジンを開発し、20カ国から6000基を受注している米ゼネラル・エレクトリックはこの流れで先行している。またファインセラミックスは高価だからと敬遠されているのなら、耐熱性改善が求められている部分だけにファインセラミックスを使えば、コスト上昇を抑えられる。
 
 気がかりなのは東日本大震災を機に「絆」の重要性が叫ばれるようになったものの、この2―3年は企業も省庁も横連携が弱体化しているように見受けられることだ。この横連携が活性化して材料同士の相乗効果が発揮できるようになれば、堰(せき)を切ったようにセラミックス市場は広がるはずだ。
 
 当協会が今年発足した「革新製造プロセス研究会」は業界の垣根を越えた異業種、異分野の企業が集う「アリーナ(連携の場)」の提供をコンセプトにしている。またこの春には米国先進セラミックス協会(USACA)と提携した。2カ国間で国家開発プロジェクトの情報交換などから始め、素材開発などでも連携を深めていきたい。
 

【略歴】やの・ともさぶろう 筑波大大学院博士課程修了。通商産業省(現経済産業省)入省後、インドネシア政府の政策アドバイザーなどを経て、14年日本ファインセラミックス協会専務理事。大分県出身、61歳。


日刊工業新聞2015年11月03日 2面

村上 毅

村上 毅
11月07日
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耐熱性や耐食性、機械的強度など、軽量素材として注目されるファインセラミックス。日本での採用はスマートフォンや自動車の電子部品向けに偏り、用途が限られている。逆を言えば、需要家のニーズを満たすような提案力を増すことができれば、利用は拡大する。

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