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患者の精神負担大きい乾癬ー生物学的製剤に期待高まる

専門医は語る「“死海療法”も選択肢」
患者の精神負担大きい乾癬ー生物学的製剤に期待高まる

人目につく部位に症状が現れることも多い(協和発酵キリン「かゆみナビ」より

 慢性の皮膚疾患である尋常性乾癬(かんせん)。皮膚が赤く盛り上がり、その上に鱗屑(りんせつ)と呼ばれる乾燥した角質が付着してはがれ落ちる。症状が人目につきやすい部位に現れることも多く、患者の精神的負担は大きい。生物学的製剤や湯治など治療の手段は複数あり、病態の理解とともに最適な対処法の選択が望まれている。

 【免疫異常が関係】
 乾癬の原因は不明な部分が多いものの、免疫機能が関係するとの指摘がある。免疫反応の異常によって表皮の新陳代謝が極端に活発化し、角質層における新旧の細胞交代のサイクルが通常は4―6週間のところ、5日間程度に短縮されてしまうことで症状が現れる。免疫異常は体質的な要素にストレスや喫煙、アルコールといった因子が加わることで起きると考えられている。

 接触により他人にうつる疾患ではないが、病名の響きからか感染するという誤解もあるという。「不潔と言われたり会社のつきあいがうまくいかなくなったりし、病苦が累積する」(大槻マミ太郎自治医科大学医学部皮膚科教授)など、患者の精神的負荷も大きい。

 【湯治で改善も】
 医療機関ではステロイド外用薬の塗布や、免疫の働きを弱める作用を持つ紫外線療法が行われてきた。近年は免疫機能にかかわるたんぱく質のサイトカインに働きかける生物学的製剤も登場。標的が明確なことから高い効果が期待されている。

 湯治が有効との報告もある。乾癬治療薬を販売する協和発酵キリンによると、北海道の豊富温泉や群馬県の草津温泉が皮膚病によいと知られており、「各地の乾癬患者会で湯治ツアーが組まれている」。医師は患者の体質や症状を踏まえ、多様な治療法から最適なものを選ぶことが求められる。
(文=斎藤弘和)

 【専門医は語る/自治医科大学医学部皮膚科教授 大槻マミ太郎氏】
 日本の乾癬患者数は10万―50万人と推定されており、男女比は約2対1。患者は風呂に入ると(はがれ落ちた皮膚で排水溝が)詰まる、などということで家族からも疎まれる。恋愛に支障が出て自殺を考える女性もいた。

 生物学的製剤はTNFαやIL―23といったサイトカインの作用をピンポイントに抑制する効果が非常に高い。ただこの病気にはこの薬、と決まっているわけではない。患者さんの性格や希望、通院条件は多様。生物学的製剤は費用も高額だ。専門家はこれらの点を相談しながら知恵を振り絞る必要がある。

 死海療法というものもある。(イスラエルに接する死海は)海抜がマイナス400メートルくらいのため穏やかな紫外線だけが到達する。水浴びでストレスも解消でき、治療に良い。乾癬の学会もここで定期的に開かれる。(談)

 ※「病と闘う/疾患治療最前線」は日刊工業新聞で随時連載中
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自分は皮膚疾患にかかったことはないのだけど、実際のかゆみなどとともに見た目への精神的苦痛も相当なものだと容易に想像できる。まずは少しずつでも回復しているという実感(メンタルケアに近いかも)が重要かも。

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