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タカタ、膨張装置の生産停止。ホンダは採用しないことを表明

「安全性に自信を持っているが、消費者の不安解消や当局の強い要請を考慮し判断した」(高田会長兼社長)
タカタ、膨張装置の生産停止。ホンダは採用しないことを表明

会見中、時折渋い表情を見せる高田会長兼社長

 タカタは4日、エアバッグの欠陥問題を巡り、安全性が懸念されている自社製インフレーター(膨張装置)の生産販売を、2018年末までに止めると発表した。新規の受注も行わない。同日同社の大口取引先であるホンダも、タカタ製インフレーターの採用停止を発表した。

 米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)と同日合意した。米国だけでなく世界で同様の措置をとる。同日都内で会見した高田重久会長兼社長は「インフレーターの安全性に自信を持っているが、消費者の不安解消や当局の強い要請を考慮し判断した」と述べた。

 NHTSAとは、リコール情報の報告漏れや対応遅れがあったとして民事制裁金を最大で2億ドル(約240億円)を支払うことでも合意。高田会長は「深く反省し徹底した再発防止と内部統制の強化を図る」とした。今回の合意の業績影響については「精査中」(野村洋一郎取締役)と述べるにとどめた。

ホンダ「(不適切な報告を受けたとして)第三者による検証をタカタに要請している」


 ホンダは4日、タカタ製エアバッグの欠陥問題を巡り安全性が懸念されているタカタ製インフレーター(膨張装置)を開発中の車種に採用しないと発表した。
 
 現在生産している車種で、タカタ製インフレーターを採用しているものについても、2016年末までにすべて他社製に切り替える。
 
 同日、タカタと米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、「硝酸アンモニウム」を採用したタカタ製インフレーターの製造販売を18年末までに中止することで合意したことを受けた措置。
 
 また問題を巡ってホンダはタカタから不適切な報告を受けたとして「第三者による検証をタカタに要請している」(岩村哲夫副社長)。
 

全額タカタが負担すれば債務超過になる恐れ。経営厳しい局面に


 タカタにとって最大の取引先であるホンダが、新規開発車や継続車でタカタ製インフレーターの採用停止を表明したことで、タカタの経営は厳しい局面に立たされることになりそうだ。他の車メーカーがホンダに追随すれば、影響はさらに広がる可能性もでてきた。
 
 エアバッグ事業はタカタの売上高の約4割を占める。また、ホンダはタカタの売上高の約1割を占める最大の取引先。ホンダとの取引停止は事業の大幅な見直しに直結する。
 
 さらに、タカタは世界で3000万台以上とも言われるリコール対象車すべてに製品保証引当金を計上していない。不具合の根本原因が究明されない限り引当金を見積もれないとの立場で、第三者機関に依頼する調査が進めば車メーカーと引当金の割合について協議する。
 
 仮にタカタが全額負担すれば追加の引当金が3200億円を超え、債務超過に陥るとのアナリストの試算もある。調査結果によってはタカタの負担がさらに大きくなり、経営に重大な影響を与えかねない。
 

高田会長兼社長ら会見「見えないリスクあるが、根拠ある数字は存在しない。一つひとつ解決していく」


 ―米国以外での(供給停止の)対応は。
 高田会長兼社長「米国以外の地域は、車メーカーと協議しながら、同様のタイミングで進めたい」
 
 ―インフレーター容器破損の原因究明が、米当局と決めた期限の18年末、19年末に間に合わなかった場合は。
 清水博取締役(品質保証本部本部長)「当局と協議しながら、必要があれば、現在対象でない製品も対応(リコール)する」
 
 ―リストラは。
 高田会長「話はあるが、今は交換用部品の生産に工場はフル回転の状態だ。(リストラするとしたら)その後の受注や交渉による。今期中に発生することはない」
 
 ―ホンダが開発中の車でタカタ製インフレーターの使用を停止する影響は。
 野村洋一郎取締役「ホンダの比率は全世界売上高に対し10%超」
 
 高田会長「エアバッグに使うインフレーターは全てが内製ではない。内製の比率をどうするかだ。見えないリスクあるが、根拠ある数字は存在しない。一つひとつ解決していく」
 
日刊工業新聞2015年11月05日 1/3面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
やはりホンダの宣言の影響は大きい。タカタの取引先上位は1位がホンダ、2位があのVW。どこまでほかの完成車メーカーに広がるか。内製品は利益率が高い。高田会長兼社長は「根拠ある数字は存在しない」と話したが、内製比率がどこまで下がるかも経営のポイントになる。

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