「コミュニケーション力の高い理工系学生」になるポイント

【学生応援】ニューノーマルに生きる君たちへ #07

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第19回理工系学生科学技術論文コンクールの入賞者ら

本企画ではここまで、理工系学生の皆さんが関心を持ちそうなテーマとして、新型コロナウイルス感染症が拡大する環境下でのオンライン授業や就職活動を紹介してきました。最終回は、重要な”コミュニケーションのツール”としての文章力についてお話します。小論文は時に就職・採用活動の中で課せられますが、より一般的な文章を通じた自己表現として、エントリーシート(ES)も出てきます。ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)で慣れ親しんだ短文とは異なる、きちんとした文章を書けるかどうかは、社会人になってからも問われる重要な能力なのです。

まず、文章を含むコミュニケーションの最大のポイントとは、何でしょうか。私は「相手に伝わるように書く」という点を、あげたいと思います。「相手にわかる」だけでなく、「相手に伝わる」ということです。これまでに自分の会話表現に対して、相手が「それで?」「だから何?」と反応し、とまどった経験がありませんか?それは「表面的なことはわかってもらえた。けれどもそのことを通して、あなたが言おうとしていることが何なのか、本当のところが伝わっていない」という状況なのです。相手の心に響いて初めて「伝わった」といえるようになります。

理工系の論理に加え、分野外の人に響く内容や表現を

理工系は一般に「コミュニケーションが不得意でしゃべることも苦手」といわれますが、少しニュアンスが違う場合があります。理工系学生のかなりの部分は、「〔しゃべれない〕のではなく〔しゃべらない〕だけ」との話を耳にしました。というのは、相手からの質問を受けた場合に、理由も含めきっちりと答え、論理(ロジック)が整っていることが多いからだそうです。そう、「理系の話は筋が通っている」というのは一般社会の共通認識です。

この理工系の強みである論理を大切に、理工系以外の人にも響く内容や表現の工夫をすることが、”コミュニケーション力の高い理工系学生”になるポイントとなります。大きく文系と理系に分けると、その違いは、関心を持つ対象の違いにあります。自然現象に関心が強い人が理系、人間社会が気になる人が文系です。

ある新製品の活用を企業や家庭で検討しているとします。すばらしい性能ですが時に事故が起こります。その危険性を企業側の担当者は、自動車の利便性と事故率を引き合いに出し、それに比べるとたいして心配ないのだと説明しました。文理で違う反応を少し誇張してみると以下のようなものになるでしょうか。

理系は「この技術の性能はすばらしい。自動車との比較でメリットとデメリットを考えると、許容範囲内といえるから使うことにしよう」と判断します。これは、理系は合理的なら選択するという〔理論〕が強いためです。〔自然の現象と、それを発展させたモノや仕組み〕が好き。道具を使って試すのが得意。ですから向いている仕事は、職種なら研究職や技術職、業種なら製造業などになるのです。

一方、文系はより用心深い反応を示します。「自分の大切な人が事故にあう可能性があるのなら、この程度のメリットに振り回されず使わないことにしよう」と判断します。これは、文系は自身や周囲の人と生活を大切にしたいという〔感情〕が強いためです。〔人と、人の営みで構成される社会〕が好き。書いたり話したりするのが得意。ですから向いている仕事は、職種なら人を直接、相手にする営業職、業種ならサービス業などになるのです。

いかがでしょうか。「自分は確かに、理系っぽいな」と思ったら、そう思った視点をまず、自らの特徴として大事にしてください。その上で、自然発生的に生まれた考えを、身近な人から社会全体のことへと、ぐーっと広げてみてください。そうすることによって、理系のスペシャリストならではのコンテンツが、文系のゼネラリストに理解してもらえるものに変わっていきます。それが場合によっては、異分野融合のイノベーションにつながっていくのです。

〔人との交わり〕の具体的エピソードを

本コンクールへの応募作品でも、ぜひ人と社会についてしっかり考えて語ってほしいのですが、そう大上段に構える必要はありません。自分の身近な友人や家族、大学の先生や仲間との交わりなど、具体的な人との交わりから考えていけばよいでしょう。長めの文章には、体験談などエピソードが入ると魅力が高まります。今は新型コロナウイルス感染症の影響で活動の自由度は減っていますが、大学の学びでも屋外に出てのフィールドワークや、グループで解決法を模索するプロジェクト・ベースト・ラーニング(PBL)、企業活動の一端に触れるインターンシップ(就業体験)などの活動が増えています。こういった体験の中から、あなたの論理と、「人と社会への思い」をつなげてはどうでしょうか。

それから一つ、締め切りについて少々。締め切りは表向きは、「オーバーしたらアウト、オーバーしなければセーフ」というものにすぎません。ただ一般的にいって、就職活動の関連資料提出を含め、「余裕を持って出す」ことが好まれるようです。もちろん、直前になって集中する方がよいものができあがる、という人もいるでしょう。ですが、論文や原稿が、字が乱雑など大あわてで書き殴った様子で、締め切りぎりぎりで送られてきたら、やっぱり印象は今ひとつになりますよね。これもまた、「論理的には問題ないけれど、人間社会としては注意がいる点」かもしれません。

新型コロナの拡大で、社会では多くの価値観や慣習がひっくり返ることになりました。学生の皆さんも、「より本質的で、自分にとって大切な場や活動とは何か」と、改めて考えたことでしょう。本コンクールはそんな中で未来に思いをはせて、また自主活動として自らハードルを課して取り組む、絶好のチャンスです。入賞にこぎつけられなかったとしても、「一つの挑戦となる活動を、自分の意思でしっかり仕上げた」という自信は、あなたを強くしてくれることでしょう。「理工系学生科学技術論文コンクール」、皆様の応募をお待ちしています!

(連載執筆:日刊工業新聞社 論説委員兼編集委員 山本佳世子、総合事業局 住谷敬史)

参考文献:『理系のための就活ガイド』山本佳世子著

「理工系学生科学技術論文コンクール」応募のススメ

理系の学生はかつて、大学や高等専門学校における専門の学びをしっかりしていれば評価されましたが、時代は大きく変わってきました。創造性、コミュニケーション力、課題突破力…。多くのものが求められて大変です。そこで、これらの総合的な力を伸ばす手立てとして、小論文を書くという活動に取り組んでみてはどうでしょうか?

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