今期業績から見えてきた鉄鋼大手“冬の始まり”

止まらない鋼材輸出価格の下落。下期はさらに悪化へ

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各社とも下期の粗鋼生産計画見直しに迫られている(神鋼加古川製鉄所)
 鉄鋼大手が正念場を迎えている。国内の在庫調整の遅れや中国メーカーによる輸出攻勢で事業環境が想定以上に悪化。新日鉄住金など大手が相次ぎ2015年度の業績見通しを下方修正した。減産解除のめどが立たず、市況悪化で鋼材単価も下落。特に輸出環境はかつてないような水準まで落ち込んでいる。そうした各社の苦境は、15年4―9月期連結決算の各種公表数字からもうかがい知ることができる。
 

薄鋼板3品在庫は依然高水準


 「9月末の数字が出て、がっかりした。もう少し調整が進むと期待していたが、7月末のレベルにも戻らなかった」。新日鉄住金の太田克彦副社長は、予想以上に積み上がった鋼材在庫にため息をつく。需給環境を判断する指標の一つ、薄鋼板3品在庫は9月末も約421万トンと高水準のまま。在庫調整が済んだと判断できる400万トンを大きく上回った。

 鉄鋼大手は在庫調整を目的に4月から大規模な減産に突入。当初は遅くとも10月には減産を解除できると踏んでいた。実際、薄鋼板3品在庫は7月末に約407万トンまで減少。需要面でも建設向けでは季節要因でいわゆる“秋需”が盛り上がり、製造業向けでも自動車の新車効果や造船向けの出荷増が見込まれていた。

 加えて、過剰能力を抱える中国メーカーによる輸出攻勢も「赤字操業でいつまでも続かない」(業界関係者)と判断し、いずれ収束すると想定。各社とも7月末の段階で下半期(10月―16年3月)の粗鋼生産量をほぼ例年並みで織り込んでいた。

 ところが、目算は外れた。10月上旬、経済産業省は10―12月期の粗鋼生産量が前年同期比3・7%減になるとの予測を発表。追い打ちをかけるように、中国の9月の鋼材輸出量が単月で過去最高を更新した。これを受け、各社とも下期の粗鋼生産計画の見直しに迫られた。新日鉄住金は7月に「少なくともそこに向けて努力したい」(太田副社長)と最低ラインに位置付けていた2200万トンを割り込み、2170万トン程度に下方修正した。

量を稼ぐ


 JFEスチールは「何と言っても輸出環境が悪い。自動車向けもそれほど見込めない」(岡田伸一JFEホールディングス副社長)とし、通期で2800万トンを2770万トンに修正した。しかも「高付加価値品の増産は難しい。(比較的、付加価値の低い)熱延鋼板を拡販するなどポートフォリオの変化で量を稼ぐ」(同)と言うように、修正幅の数字以上に収益へ打撃を受けそうだ。

 神戸製鋼所は17年10月までに神戸製鉄所(神戸市灘区)の上工程を加古川製鉄所(兵庫県加古川市)へ集約するのに合わせ、半製品をつくりだめ中。それでも7月に下期390万トンとしていた想定を380万トンに修正。通期では770万トンが745万トンに減り、操業トラブルで生産を落とした前期をも下回ることになりそうだ。

日刊工業新聞2015年11月04日/05日 素材面

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

冬の時代の始まり―。鉄鋼業界を取り巻く雰囲気は、まさにこんな感じではないか。遡ること3年前。超円高にあえいでいた日本の鉄鋼業が、政権交代を機に急速に円安が進行して息を吹き返す。為替競争力に加え、東南アジア諸国の経済成長も追い風となる。世界的な供給過剰で苦しむ欧州、韓国勢をしり目に、日本の鉄鋼業は成長をおう歌した。それが一転して苦しんでいる。この要因は複合的に絡んでいる。国内自動車販売は低調で、資材高や人件費高騰を背景に建設需要も鈍い。海外では中国、東南アジアの成長鈍化で鋼材需要が減少。さらに原油安を背景にエネルギー関係の案件が完全に止まり、パイプやプラント、海洋開発関連の鋼材需要は低迷した。安値の海外材の攻勢もボディーブローのように響く。3年前、日本の鉄鋼業界はコスト競争力に磨きをかけてきた。追い風が止んだ今こそ、真の実力が問われる。

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