車載分野は収益を押し上げるのか。電子部品大手の勝算
TDK、EPS用の磁気センサーを海外生産へ。京セラ、パワー半導体とシナジー狙う
TDKは自動車の電動パワーステアリング(EPS)などに搭載する磁気センサーの海外生産を始める。米国工場を活用する方向で調整している。デンソーなど国内外の大手車載機器メーカーに採用され需要が拡大しており、安定供給に向けて日本と海外の両方で生産する体制を整える。2017年度に車載用電子部品事業を14年度比2・1倍の3900億円にする計画の達成を確実にする。
米国にあるハードディスク駆動装置(HDD)用磁気ヘッドの生産拠点を利用し、車載用の磁気センサーを生産する見通し。生産拠点の選定後、早ければ今年度内にも磁気センサーの生産に向けた準備を始める。現状は国内拠点だけで生産している。センサーの需要増や事業継続計画(BCP)対策で海外にも拠点を設ける必要があると判断した。
同センサーは自動車のハンドルの角度を高精度に検知できるのが特徴。EPSを細かく制御することが可能になりモーターの駆動を効率化し、車の燃費改善に役立つ。「TMR素子」と呼ぶHDD用磁気ヘッドに使われている素子を、車載用センサー向けに構造を最適化し製品化した。
TDKは15年度にスタートした3カ年中期経営計画で車載事業を拡大する考えで、同事業の売上高構成比率を17年度に30%(14年度は17%)に引き上げる計画を打ち出した。同社は磁気センサーを目標達成に向けた重要デバイスと位置づけ拡販に力を入れている。
京セラが半導体事業に参入した。日本インターをTOB(株式公開買い付け)により買収し、9月に連結子会社化を完了した。半導体などに使われるセラミックスパッケージではトップシェアの京セラだが、半導体事業とどのような相乗効果が得られるのか。山口悟郎社長に聞いた。
―日本インターを買収した狙いは。
「日本インターが手がけるパワー半導体の可能性は、これから産業分野などでどんどん広がる。ただ、大きな狙いはやはり車載事業の強化だ。2017年3月期に同事業で売上高3000億円(14年3月期実績比2倍)の目標を掲げており、そのための方策の一つ。すぐに業績に貢献する訳ではないが、時間をかけて取り組んでいく」
―買収の効果は。
「日本インターはほとんど海外に販路を持っておらず、国内販売比率が7割を占めている。まずは京セラの海外販売網を活用するだけでも、着実に事業を拡大できる。加えて同社のパワー半導体と組み合わせるパッケージを、京セラのセラミックスや有機材料に置き換えられないかも検討する」
―京セラが半導体事業に参入するのは初めてとなります。
「確かに事業としては手がけていなかったが、先端分野として研究は続けていた。大手半導体メーカーと同じことをしようとは考えていないが、半導体工場を自ら持つことで、MEMS(微小電気機械システム)やセンサーなど、できることがいろいろ広がっていく。半導体事業には入るべくして入ったと思っている」
―日本インターの業績は決して好調ではなく、設備投資も十分ではありません。どう改善しますか。
「相手も上場企業なので、現時点でまだ決めていることはない。年内には来期(2017年3月期)の業績をどれだけ伸ばしていくかを見極める。事業拡大を狙って、さらに関連企業を買収することだってあり得る」
【記者の目/シナジー効果、創出カギに】
若手のころ、日本インターを営業で担当したことがあった山口社長は「まさか半導体メーカーを買収することになるとは思わなかった」と話す。ただ、今や電子部品の世界でも半導体技術は欠かせない。京セラにとって半導体事業が強みになるのか、逆に重荷になってしまうのかは、どれだけシナジー効果を生み出せるかにかかる。
(聞き手=尾本憲由)
米国にあるハードディスク駆動装置(HDD)用磁気ヘッドの生産拠点を利用し、車載用の磁気センサーを生産する見通し。生産拠点の選定後、早ければ今年度内にも磁気センサーの生産に向けた準備を始める。現状は国内拠点だけで生産している。センサーの需要増や事業継続計画(BCP)対策で海外にも拠点を設ける必要があると判断した。
同センサーは自動車のハンドルの角度を高精度に検知できるのが特徴。EPSを細かく制御することが可能になりモーターの駆動を効率化し、車の燃費改善に役立つ。「TMR素子」と呼ぶHDD用磁気ヘッドに使われている素子を、車載用センサー向けに構造を最適化し製品化した。
TDKは15年度にスタートした3カ年中期経営計画で車載事業を拡大する考えで、同事業の売上高構成比率を17年度に30%(14年度は17%)に引き上げる計画を打ち出した。同社は磁気センサーを目標達成に向けた重要デバイスと位置づけ拡販に力を入れている。
京セラが半導体に参入した理由。山口社長インタビュー
京セラが半導体事業に参入した。日本インターをTOB(株式公開買い付け)により買収し、9月に連結子会社化を完了した。半導体などに使われるセラミックスパッケージではトップシェアの京セラだが、半導体事業とどのような相乗効果が得られるのか。山口悟郎社長に聞いた。
―日本インターを買収した狙いは。
「日本インターが手がけるパワー半導体の可能性は、これから産業分野などでどんどん広がる。ただ、大きな狙いはやはり車載事業の強化だ。2017年3月期に同事業で売上高3000億円(14年3月期実績比2倍)の目標を掲げており、そのための方策の一つ。すぐに業績に貢献する訳ではないが、時間をかけて取り組んでいく」
―買収の効果は。
「日本インターはほとんど海外に販路を持っておらず、国内販売比率が7割を占めている。まずは京セラの海外販売網を活用するだけでも、着実に事業を拡大できる。加えて同社のパワー半導体と組み合わせるパッケージを、京セラのセラミックスや有機材料に置き換えられないかも検討する」
―京セラが半導体事業に参入するのは初めてとなります。
「確かに事業としては手がけていなかったが、先端分野として研究は続けていた。大手半導体メーカーと同じことをしようとは考えていないが、半導体工場を自ら持つことで、MEMS(微小電気機械システム)やセンサーなど、できることがいろいろ広がっていく。半導体事業には入るべくして入ったと思っている」
―日本インターの業績は決して好調ではなく、設備投資も十分ではありません。どう改善しますか。
「相手も上場企業なので、現時点でまだ決めていることはない。年内には来期(2017年3月期)の業績をどれだけ伸ばしていくかを見極める。事業拡大を狙って、さらに関連企業を買収することだってあり得る」
【記者の目/シナジー効果、創出カギに】
若手のころ、日本インターを営業で担当したことがあった山口社長は「まさか半導体メーカーを買収することになるとは思わなかった」と話す。ただ、今や電子部品の世界でも半導体技術は欠かせない。京セラにとって半導体事業が強みになるのか、逆に重荷になってしまうのかは、どれだけシナジー効果を生み出せるかにかかる。
(聞き手=尾本憲由)
2015年10月21日 電機・電子部品/10月30日1面