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村田製作所は一日にして成らず(14=最終回)立ち止まるのが最大のリスク

次の市場はどこか?
村田製作所は一日にして成らず(14=最終回)立ち止まるのが最大のリスク

村田恒夫社長

 スマートフォン市場で絶対的な強さを誇る村田製作所。だが村田恒夫社長は常に危機感を持ち、現状に満足はしない。電子部品業界のイノベーター(革新者)が描く未来とは―。村田社長に聞いた。

 ―2014年3月期の売上高は8200億円を見込みます。1兆円もいよいよ視野に入ってきました。
 「売上高にはあまりこだわっていない。1兆円はかつても掲げていたが、数字はやるべきことをやれば、おのずとついてくる。社是や理念にもう一度立ち返り、自分たちの事業をしっかりと見据えていけば到達は可能だろう」

 ―現在の利益水準に満足していますか。
 「営業利益率をコンスタントに2ケタ出せる会社が理想だ。15%ぐらいが目標。それには新製品の売上高比率を40%に持っていくことが重要だ。同比率が高まれば、それだけ先行者利益を得られる。海外出張では新製品を意識して、新分野を手がける拠点によく顔を出している。トップとして、市場開拓や新商品のPRには時間を割いている」

 ―成長著しい海外部品メーカーとはどう戦いますか。
 「海外メーカーに勝つには、自分たちのコアコンピタンスをしっかりと見極め、これを磨くことだ。当社はずっとセラミックスにこだわってきたが、それだけを見ていてはだめ。他の技術ももっと広く見る必要がある」

 ―セラミックスに続く有望技術には何を挙げますか。
 「最近ではM&A(合併・買収)で、微小電気機械システム(MEMS)や水晶技術、パワーアンプ事業などを手に入れた。車載やヘルスケア、環境・エネルギーなど新分野に積極的にチャレンジする。(既存技術だけに)こだわって、たこつぼに入ってしまうと大変なことになる」

 ―電子部品業界を生き抜くには何が必要ですか。
 「業界の過去の数値を見ても2、3年良い時期が続き、そこから落ち込むケースが多かった。なかなか右肩上がりが続くことはない。電子部品は市況によるところが大きく、少し当たれば伸び率は大きくなる。それだけに、次に伸びる市場を見極めることが不可欠だ」
(この項おわり。京都・長塚崇寛、下氏香菜子、編集委員・明豊が担当しました)
日刊工業新聞2014年03月07日 電機・電子部品・情報・通信
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
1年半あまり前に「1兆円もいよいよ視野に」と言っていたのが、いまや売上高1兆2000億円(2016年3月期見通し)。最先端品でリードし、いち早く供給体制を整えて大手スマホメーカーをしっかりつかむ。そんなビジネスモデルの強みを最大限に発揮している。かなり居心地の良い「たこつぼ」のはずだが、これを自らどのように打ち破っていくのか楽しみだ。

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