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「エリエール」に見る汎用テッシュの生き残り策

大王製紙、3年ぶりにリニューアル。鼻をかむ際の摩擦減らし肌にやさしく
 大王製紙は10月21日、汎用ティッシュペーパーの主力商品「エリエールティシュー」を3年ぶりにリニューアルした。人気タレントを起用したテレビCMも制作するなど、汎用品としては異例のセールスプロモーションを展開している。特売の目玉にされ続け、低価格化してしまった汎用ティッシュの”底上げ“を狙う。もちろん、そこには品質の裏付けがある。

 アレルギー性鼻炎に悩む人が増えていることもあり、ティッシュペーパー市場には保湿成分を配合したプレミアム商品も定着した。同社も1993年に「エリエール ローションティシュー」を発売し、現在、その後継品である「同 贅沢保湿」と「同 +Water」をラインアップしている。

 だが、国内市場は人口減に伴う需要の頭打ちと、汎用品の低価格化に足を引っ張られ、13年度をピークに縮小傾向。大王製紙の場合、プレミアム商品の割合は1割程度で「事業拡大には数量が出る汎用品分野の価格帯を引き上げることが不可避」(立石浩義ホーム&パーソナルケア事業部マーケティング第二本部長)だった。

 汎用ティッシュは5箱パックで平均的な店頭価格が298円の「ファースト」、同248円の「セカンド」、同198円の「サード」の3セグメントに分けられる。市場調査によると、汎用品分野の金額構成比は14年でサードが47%、セカンドが38%、ファーストが15%。安価な海外製品の流入もあってサードの比率が2年間で12ポイント高まった。大王製紙は15年について、サードの比率がさらに2ポイントアップして49%になると見込む。

 エリエールティシューはファーストセグメントの有力ブランドだが、汎用品市場としては劣勢に立たされていた。

独自に市場調査、肌触りを指数化


 独自の市場調査に基づき、同社が選んだのは汎用品分野でも品質を訴求する戦略。汎用品で1日に5回以上、鼻をかむ消費者の84%が肌へのダメージに対する不満を持ちながら、価格がネックとなってプレミアム商品の購入を控えていた。一方、価格を重視するユーザーの3割程度が、品質の良さを評価できれば100円程度(1箱当たり20円)の追加負担を容認することも把握。約2年前から品質改良に取り組んだ。

 鼻をかむ際、肌がダメージを負う要因はティッシュとの摩擦。トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑学)を専門とする東北大学大学院工学研究科の堀切川一男教授らとの共同研究により、肌触りの評価を指数化することに成功、柔軟剤配合だけで大幅に”滑らかさ“を増すリニューアルにつなげた。

 10月下旬の発売から15年度末までの半年弱で、販売数量は前年同期比40%増を計画。まず手に取って、滑らかで柔らかい肌触りを知ってもらうため、ポケットティッシュタイプ(10組6個パック)も設定した。

 家庭紙事業子会社の大宮製紙(静岡県富士宮市)で、製品開発に携わった佐々木信義商品開発部部長代理は「これまで官能評価に頼ってきた肌触りを指数化できたことで、今後の製品開発にも弾みがつく」と期待する。
(文=青柳一弘)
日刊工業新聞2015年10月30日 モノづくり面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
これまで官能評価だったというのが少々驚き。自分自身はテッシュを銘柄で選ばないが、中には肌ざわりとか気にする人もいる。1箱当たり20円の追加負担は結構な金額。そんな潜在ユーザーが3割もいるというが、どれだけ掘り起こされるか今後の販売動向に注目。

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