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航空機エンジンがセラミック製になる日

GEがセラミックマトリックス複合材料の新工場を相次ぎ建設へ
航空機エンジンがセラミック製になる日

ADVENTによるCMC製ブレードを採用した低圧タービン(画像:GEアビエーション)

 人類は3000年以上にわたって鉄やスチールでものづくりをしてきた。いまや月面から海底まで、様々な場所に、合金製の機器や設備が設置されている。しかし、サンジェイ・コレア氏をはじめGEアビエーションのエンジニアたちは「金属が尽きてしまうのも時間の問題」だと確信する。

 彼らが開発中のセラミックマトリックス複合材料(CMC)と呼ばれる新素材は、これから発電産業から航空産業まであらゆる分野に革命を起こし、たとえば航空産業で言えば10年も経たないうちに今よりはるかにパワフルで効率的なジェットエンジンを作れるようになる。

 「それはもう、絶大な進歩になりますよ」とコレア氏。GEは今週、昨年ノースカロライナ州アッシュビルに開設した米国初のCMC工場に続き、今度は米国アラバマ州・ハンツビルに2つのCMC工場を新設すると発表。CMC製部品の量産に必要なサプライチェーンを構築するために、2億ドル(約240億円)を投資することを決めた。

 CMCのような「複合材料」とは、その名が示すとおり、異なる材料を組み合わせてできているもの。身近な複合材料の例を挙げるならば“コンクリート”もそのひとつ。

 最初に炭化ケイ素の製造に着手した場所は日本だった

 GEのCMCは、炭化ケイ素マトリックスに埋め込まれた微細な炭化ケイ素繊維から作られている。この炭化ケイ素繊維はヒトの髪の毛の5分の1の細さで、「企業秘密のコーティング」が施されている。

 金属材料の3分の1と軽量でありながら、耐熱温度は金属材料より20%も高く、多くの合金が溶解し始めるほどの高温でも使用することができる特性がある。つまり、金属並みの強度があり、セラミックより耐久性のある素材だ。

 GEが初めて炭化ケイ素遷移の製造に着手した地は日本。日本カーボンが50%、GEが25%、サフラン・グループが25%を出資した合弁会社、NGSアドバンストファイバー株式会社(以下、NGS)を2012年に立ち上げた。

 今回アラバマ州での建設を決めた2つの工場のうち1つは、米国で初めて炭化ケイ素繊維を扱う工場となり、GE製品のためだけでなく米国防総省への素材供給も行う。

 もう1つの工場では炭化ケイ素繊維を利用して企業秘密のCMCテープを作り、すでに稼働しているノースカロライナ州・アッシュビルにあるGEのCMC工場で利用することになっている。


村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
航空機におけるCMCは、自動車におけるCFRPと似ている。強度と軽量化を合わせ持つ新素材として注目されている。より航続距離を長く、それでいて省エネルギーな次世代機の開発が進む航空機業界。それは機体だけでなく、エンジンも同様だ。燃費性能を高めるために、高温環境下に耐える耐熱性、そして羽根などの回転部品の軽量化が求められる。CMCは航空機エンジン部品で一般的なニッケル合金よりも耐熱性があり、軽量な炭化ケイ素で構成される。価格は高価だが、普及する速度は加速しそうだ。

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