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ドローン、複数台管理が商用利用のカギ握る

文=三治信一朗(NTTデータ経営研究所)現状は軍事が圧倒的で1000億円市場
ドローン、複数台管理が商用利用のカギ握る

初めて国内で量産化されるドローン「ミニサーベイヤー」のデモ飛行(2月20日、福島県南相馬市=時事)

 意外かもしれないが、国際ロボット連盟(IFR)の統計ではドローンもロボットの市場としてカウントされている。無人で飛び、さまざまな情報収集を目的としているのであるから、ロボット的要素はあると考えてよいだろう。

 現在の圧倒的多数を占める市場は軍用であり、現時点で1000億円規模の市場であるといわれる。利用シーンで次に多いものが娯楽用のものである。小さいものでは、指先大のドローンまであるのも興味深い。現在軍用を除くものでは、ほとんどが趣味、娯楽的な要素であるといわれている。

 アマゾンなどが配送などで本格利用を検討しているが、課題は法規制と安全性の問題が大きいとされている。商用利用が一般的になる姿を描きにくいのは、法・制度ありきであるためである。事後的な規制と事前の予防策が過度に行われることで、新しい技術の利用が進まないことが懸念される。

 【検査・監視】
 わが国においては、社会インフラの検査・モニタリングなどへの利用が期待されているが、こちらはやや難易度が高いようだ。というのも、現在の基準は人間が測定することを基準としているので、わずかに風などで測定位置がずれることだけでも、その補正が非常に難しいというわけだ。

 そう考えると、ある程度、ルーズな測定でも人間業も合わせて調整していくような人とロボットが役割分担することで、うまく対応することができるのが、ドローン活用の次のステップであると考えられる。また、ドローンが普及していく過程では、複数台を群で管理するような技術のほか、通信、ソフトウエアなどの共通化も課題になっていく。複数台の管理ができるようになることで、利便性は飛躍的に高まる。こうした基盤的な研究にも焦点を当てたい。

 先にドローン先進国として米国を挙げたが、意外にもカナダ、中国といった国も注目すべきである。カナダは米国よりも規制が緩く、申請許可件数は米国の30倍以上になっている。国・自治体が、適切な利用機会を提供できれば、自然と研究開発の集積につながる。中国では、利用は政府部門や軍事に制限されているものの、大学研究機関での開発は活発だ。

 【中国で展示会】
 今年中国の展示会に行った際に日本と最大の違いを感じたのは、日本の展示会では、柵の中だけで飛行デモを行っていたのだが、中国の展示会では、柵がない環境で、ドローンを勝手に飛ばし、それを通行人がしげしげと見ていた。安全性は大事だが、新しい技術を肌で感じ、使いこなしていく姿勢も大切だ。
 
三治信一朗(さんじ・しんいちろう)NTTデータ経営研究所 事業戦略コンサルティングユニット 産業戦略チームリーダー シニアマネージャー。2003年(平15)早大院理工学研究科物理学及応用物理学専攻修了、同年三菱総合研究所入社。15年NTTデータ経営研究所に入社し産業戦略チームリーダー。
日刊工業新聞2015年10月30日 ロボット面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
結構墜落しそうだが、ドローンも中国が一気に利用シーンを作り出しそう。ただでさえ規制ががんじがらめの日本は官邸に墜落した時点で運がないというか。

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