設計からメンテナンスまで、 異彩を放つ自動制御盤メーカーの「受注力」

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本社工場で行われているケーブル組み付け作業
 

神奈川県綾瀬市に本社を構えるノーブル電子工業は建物の空調や製造設備で使う自動制御盤のメーカー。自動制御盤の設計から製造、組み立て、メンテナンスまでを一貫で扱う。一般的な自動制御盤の受注スタイルを見ると、設計は設計のみ、製造は製造のみと工程ごとの受注が一般的だが同社は異なる。一貫受注のため、設計変更やトラブル時に迅速に図面の修正履歴などのデータを取り出して検証できるほか、徹底したトレーサビリティーを維持でき、ユーザーの現場での仕様変更やメンテナンスの高い品質につなげている。

新たな収益源を育成

ノーブル電子工業の売上高約13億円のうち、空調用自動制御盤の比率はおよそ6割。残り4割が生産ラインの工場自動化(FA)用の自動制御盤や、受電設備のメンテナンスである。土橋恒一(どばし・こういち)社長によると、3年前までは売上高のほとんどが空調用自動制御盤、しかもほぼすべてが計測・制御大手企業向けだった。一本足打法による経営リスクを回避するため、新たな収益源として育成するのがFA向けなどの分野である。例えば受電設備は電力会社の送電網(大系統)と個々の建物をつなぐ部分にある変圧器などの機器。同社は受電設備のメンテナンス事業を注力分野に位置づけ、施工に必要な電気工事士の資格を持つ人材を増やしている。

 

拠点は国内4カ所とベトナムにソフトウエア関連の完全子会社を持つ。本社は自動制御盤の製造と、受電設備、FA用自動制御盤のメンテナンス、設計を担う。伊勢原オフィス(神奈川県伊勢原市)が空調用のハード設計、コントローラーのソフトウエア設計を、東京オフィス(東京都千代田区)が大手町や丸の内といった地区の大規模ビル関連のソフトウエア設計を扱う。品川営業所(東京都大田区)はメンテナンスを手がける。

設計の受注を機に飛躍

 

新規事業が順調に成長しているとはいえ、同社の事業の根幹は空調用の自動制御盤であることは何ら変わりはない。土橋社長は自社の強みを「設計から製造、メンテナンスまでを一貫で手がける総合力」と表現する。

 

しかし、一貫受注の実現の裏には多くの苦労とさまざまな人との縁があった。土橋社長がノーブル電子工業に専務として入社した1995年当時は従業員わずか4人、売上高5000万円ほどで、委託業務向けの自動制御盤組み立てを受注をしていた。当時のノーブル電子工業は技術志向の企業で、独自のやり方を通すため、「もうおたくとは付き合えない」と仕事がなくなりかけた。

 

そこで、土橋社長は取引先の工場の周辺をトラックで回り、積極的にあいさつしたり、担当者に「何か仕事はないか」と積極的なコミュニケーションや情報収集を心がけたという。そうこうするうち「制御盤の設計をやめる会社がある」との話を聞き、「ぜひ当社にやらせてほしい」と、1997年に急きょ、設計を手がけることにしたという。土橋社長が入社前に在籍した設計会社から設計ができる女性3人を引き抜き、UNIX搭載のコンピューターを何とかリースで導入したと当時を振り返る。

土橋恒一社長
土橋恒一社長

 メンテナンスも同様だ。2005年頃、現場の設置時の仕様変更を土橋社長自ら行っていると、メンテナンスの対応が遅く困っているとの話を聞きつけた。こうした現場の声をヒントに、必要な機材や工具を小型トラックに積み、都内を回り電話一本ですぐに現場で向かうメンテナンスサービスにつながった。ニーズに即応する体制が評判を呼び、同社の強みのひとつになった。入社当初から「工程ごとの受注は非効率。一貫でやる方が良い」と考えていたという土橋社長だが、ユーザーの声に耳を傾け、自ら動きニーズを具現化。その後を従業員に任せる独自のビジネススタイルで時間をかけて一貫受注を確立していった。

海外人材も積極活用

ビルの空調管理には欠かせない自動制御盤
 

同社のもうひとつの特徴が、東南アジアの人材を積極的に活用する点にもある。2014年にベトナムにソフト関連の子会社「ノーブル・エンジニアリング・ベトナム」を設立したのを機に、すでにベトナムに進出していた企業から同国進出を持ちかけられたこと、土橋社長自身もグローバルなビジネス展開を志向していたからだ。設立当時は赤字覚悟でスタートした子会社だが、現地従業員は日本とほぼ同水準の技術力を習得し、今では収益源となっている。

ビルの空調管理には欠かせない自動制御盤

 

国内でも、東南アジアの人材を活用。2015年から技能実習生の受け入れを開始し、それ以降、毎年数人単位で採用している。現在、本社工場の組み立て工程にベトナムおよびインドネシアからの実習生が従事する。

 

海外人材に限らず、日本人にとっても働きやすい企業として定評がある同社。育児との両立支援や家族との時間を大切にしてもらうため、年1回はリゾートホテルへの宿泊費用の一部を補助する制度も導入した。「離職率は低く、従業員一人一人が意欲的に仕事に取り組んでくれている」(土橋社長)と自負する。

 

こうした長年の経営実績や本社を置く綾瀬市への地域貢献活動が認められ、この春、藍綬褒章を受章した土橋社長。「何より従業員と取引先の協力があってこそ。社全員の代表として受章したと思っている」と、喜びを分かち合えるよう、褒章と褒章の記は本社の一角に大切に飾ってある。

【動画】
【企業概要】 ▽所在地=神奈川県綾瀬市上土棚北4の9の16▽社長=土橋恒一氏▽設立=1967年▽売上高=12億円(2020年11月期)

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ノーブル電子工業

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