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村田製作所は一日にして成らず(10)家の中にも「ムラタ」がいっぱい

IoTの可能性は無限大
村田製作所は一日にして成らず(10)家の中にも「ムラタ」がいっぱい

設置されたスマートハウス。自然エネルギーを効果的に利用した街づくりを目指す

**実証に貢献
 横浜市西区の住宅展示場に突如姿を現した1棟の建築物。台形の2階建ての住宅は、周囲と比べ明らかに異彩を放つ。これは企業連携組織「横浜スマートコミュニティ」が手がける、スマートハウス(次世代環境住宅)の実証実験施設だ。村田製作所もエネルギーマネジメントシステム(EMS)の実験機や光発電デバイスなどを用いたセンサーネットワークシステムを同住宅に設置。実験に大きな期待をかける。

 環境・エネルギー分野は、村田製作所の次代を担う成長市場の一つ。社長の村田恒夫も「(創業来の)セラミックス技術だけを見ていてはいけない。新たな商品でもっと顧客に価値提供しろ」とことあるごとに話す。

 センサーネットワークシステムは、人感センサーや温湿度センサー、窓の開閉を感知するセンサーなどを室内に配置。計測したデータを無線で受信機に飛ばし、パソコンで状況を確認できる。各センサーには室内照明の光を電源にできる最新技術も盛り込んだ。

 電源システム系や無線通信モジュール、センサー類―。スマートハウスのシステムに必要な主要部品の多くを持つ同社。これを見逃す手はない。通信事業を担当で取締役常務執行役員の中島規巨は「キラーアプリケーションとなる腹案がある」と今後に自信をみせる。

ヒントはIoT


 中島が担当する同事業部は、無線通信モジュールが主力事業。腹案について多くを語らない中島だが、答えのヒントはやはり無線通信に見え隠れする。キーワードは「IoT(モノのインターネット)」。IoTとは、自動車や家電、産業機器などあらゆるものをインターネットに接続する技術。センサー情報などを無線で飛ばし、クラウドコンピューティングを介してビッグデータ(大量の情報)を分析・管理する。マーケティングなどビジネス分野に留まらず、社会インフラや個人生活向けサービスなど適用範囲は広大。ここでも村田製作所の製品・技術は存在感を発揮できるだろう。

 中島は「通信に対する認識や知識は顧客によってバラつきがあり、ソリューションやシステムとして提供しないと広がっていかない」と話す。同分野は同社が生業としてきた事業とは明らかに異なる。他社との協業なども視野に「準備には時間をかけている」(同)。(敬称略)

日刊工業新聞2014年03月03日 電機・電子部品・情報・通信
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
あらゆるモノがインターネットにつながるということは、あらゆるモノが無線通信するということと同義語。スマートフォン市場で成功した同社のビジネスモデルをもっとも生かしやすい分野だ。気づかないうちにムラタ製品が家の中にあふれるのも時間の問題のような気がする。

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