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MRJは「雌伏の時」だ

MRJは「雌伏の時」だ

MRJの機体を確認する三菱航空機の技術者ら

**10月27日付 日刊工業新聞1面コラム「産業春秋」から
 きょうは大安。国産小型旅客機「MRJ」の初飛行の最有力候補日だった。残念ながら2週間の先延ばしが決まった。延期は実に5度目。当事者の“産みの苦しみ”は周囲の想像以上だろう

 優れた科学技術力と実際の加工能力を持つ日本が、なぜここまで苦戦するのか。ベテラン評論家は「旅客機を作り慣れていないから、これならいける、飛ばせるというカンのようなものが働かないのではないか」と指摘する

 図面上では成り立っても、実際の形に落とし込むには熟練の技がモノをいう。製造現場では、よく聞く話だ。戦後初の国産旅客機「YS―11」の生産終了から42年。失われたカンを取り戻すのは容易ではなかろう

 日本の半導体が世界をリードしていた時代、技術者らは「同じ製造装置を並べても日本と同水準の半導体は作れない」と独自のノウハウを誇った。しかし年を経て、韓国や中国メーカーは日本に負けない技術を身につけた。彼らも試行錯誤の連続だったに違いない

 後発者は挑戦を繰り返し、目に見えぬ技術を蓄積する。その熟練の技によってプロジェクトは安定する。日本は飛行機に劣らず困難なロケットの打ち上げで、世界最高の信頼性を確保した。今は雌伏(しふく)の時だ。
日刊工業新聞2015年10月27日 総合1面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 数日前の本紙コラムのご紹介です。初飛行の日程に関しては、26~30日の中でいつ飛ばすのか、いろいろと情報が飛び交いました。結局は2週間の延期で、我々メディア側も「仕切り直し」です。  コラムが指摘するように、MRJの開発はまさに「カン」の働かない中で、どこまで完成度を高めるかをめぐってギリギリまで逡巡している感があります。もちろん納期順守の大前提はありますが、納得できる状態で飛ばしてほしいと思います。

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