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「冷蔵庫を“モノ”という概念でみていたらビジネスモデルの変革は起こらない」

坂口孝則氏が読む未来は、モノではなくデータ売る世界!
 モノづくりの新たな胎動であるドイツ発の「インダストリー4・0(I4・0)」。現状は工場内の革新にスポットが当たりがちだが、I4・0は製造業のサプライチェーン全体の概念を一変する可能性を持つ。調達コンサルを主力事業とする未来調達研究所の坂口孝則取締役に、サプライチェーンの視点からI4・0を語ってもらった。
 
 ―I4・0がもたらすメリットは多面的と言われています。
 「I4・0は“ビジネスモデルの大変革”がキーワードだ。例えば冷蔵庫はI4・0によって劇的に変わる製品の一つ。冷蔵庫などの家電製品は、調達費や外注費といった変動費を吸収しにくいビジネスモデルだ。矢継ぎ早に新モデルが市場投入され、(既存モデルは)利益が回収できないケースもある」
 「I4・0はこうした状況が激変する可能性がある。大胆な予想をすれば、冷蔵庫を利用者に無料で提供するようなビジネスモデルも考えられる。冷蔵庫にセンサーを搭載し、内容物の残量を認識させ、家電メーカーがそのデータを食品会社などに販売する。食品会社は精度の高い顧客ニーズの把握が可能で、必要な商品をピンポイントに訴求できる。まさに家庭版ビッグデータだ」

 ―データそのものが商材になるということですか。
 「今まで誰も注目しなかったデータが価値を持つことになる。冷蔵庫を“モノ”という概念でみていたので、ビジネスモデルの変革は起こらなかった。モノを売るのではなくデータを提供するビジネスモデルだ」

 ―I4・0によって調達業務はどう変わりますか。
 「部品や部材を供給するサプライヤーは商品を直接納入せずに、設計図などのデータを提供する形が考えられる。データをもとに顧客に3Dプリンターで作ってもらえば、理論的に在庫はゼロになる。必要な分だけを作るので効率も格段に良い。とはいえ、これは製品の性質によりけりで、ジャストインタイムの製品供給も調達の重要な要素であり続ける」

 ―発想の転換という意味で米国も負けていません。
 「ウエアラブル端末をはじめ、米国は生体チップを人体に、直接装着するところまで考えている。生体チップで血糖値などの生体情報を計測。食品工場にそのデータが伝わり、利用者に必要な食品を推奨する。工場では食品専用の3Dプリンターで製造し、ヘリコプター型無人航空機が消費者に運ぶ―。食品会社は消費者の生データをもとに、生産計画を立てる時代が来るかもしれない」

 「I4・0では製品供給に加え、データのやりとりが活発化する。I4・0は工場内をどうするかという議論しかまだない。サプライチェーン全体で語ることも重要だ」

 【記者の目/欧米と競うには発想の転換を】
 サプライヤーから消費者までを巻き込んだ切り口が新鮮だった。坂口氏の論旨では、工場と最終消費者のつながりは今まで以上に濃密になる。加えて、モノのインターネット(IoT)やセンサーなど、実現への要素技術もそろいつつある。半面、生活レベルの個人データをどこまで共有できるかなど、議論の余地は多い。とはいえI4・0で欧米と競い合うには、発想の転換も不可欠となるだろう。
(聞き手=長塚崇寛)
坂口孝則
坂口孝則 Sasaguchi Takanori 未来調達研究所
この記事には問題が二つある。まず、I4.0という表記が、伊400を想起させること。もう一つが、インタビューのジャケットがベンデービスなことだ。

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