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東芝、リストラだけじゃない半導体!トヨタ採用増で車載向けに投資

パワー半導体、まず今年度10億円、来年度は数百億円も視野に
東芝、リストラだけじゃない半導体!トヨタ採用増で車載向けに投資

自身の出身母体である半導体から構造改革を本格化させた室町社長

 東芝は、半導体部門の構造改革後の重点事業の一つに車載向け半導体を位置付ける。特にパワー半導体は受注が伸びており、生産ラインのある加賀工場(石川県能美市)に2015年度に10億円超を投資する計画。不適切会計問題を受け東芝は、画像センサー事業の売却など半導体の不採算事業をリストラし、主力のNAND型フラッシュメモリーに経営資源を集中させる方針。一方で新たな事業柱の育成に取り組み、半導体部門の収益の安定化を図る。

 東芝は子会社の加賀東芝エレクトロニクスの敷地内にある工場でパワー半導体を生産している。15年度は車載向け製品の品質向上のため設備投資を行う。東芝のパワー半導体は「トヨタ車で採用を増やしている」(業界関係者)。16年度は能力増強のため数百億円の投資を視野に入れる。

 大分工場(大分市)で生産する車載向け画像認識LSIも継続する方針。先進運転支援システム(ADAS)の普及拡大で需要が伸びる見通しで、11年に投入した「ビスコンティ2」は、デンソーの前方監視カメラシステムに採用された。

 東芝の半導体部門はNANDフラッシュが利益の大半を稼ぎ出す。システムLSIとディスクリート(単機能半導体)は赤字体質が続いており、両事業の構造改革に着手する。ただ車載向け半導体は成長が期待できるほか、一度採用されると長期にわたり安定的に収益を得られるため新しい事業柱として強化していく。

分野絞り込み、次世代のSiCも急ぐ


日刊工業新聞2015年3月11日付


 東芝はパワー半導体事業の再成長に取り組んでいる。既存の製品ラインアップを車載と産業機器向けに絞り込む選択と集中を推進。その一方、汎用インバーター向け製品に再参入したほか、1200ボルト以上の高耐圧分野の製品開発を積極化するなど新分野の開拓を加速させる。

 東芝は半導体部門のディスクリート分野(2012年度の売上高1507億円)において、白色発光ダイオード(LED)とパワー半導体の両事業を成長のけん引役に位置づける。12年度にディスクリート分野での両事業の売上高比率は50%だったが、17年度には70%に高める計画を掲げている。

 パワー半導体戦略のポイントは大きく二つある。1点目は既存の製品ラインアップの絞り込み。需要の増減が激しいパソコンやテレビなどの民生向けを減らし、「中長期的に一定の受注が見込め、収益を安定化できる」(成毛康雄執行役専務)とみて車載・産業機器向けを増やす方針。

 トランジスタに深い溝を掘るディープトレンチ型で高効率を実現した金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の製品ラインアップがそろいつつあり、「13年後半から販売が伸びてきた」(馬場嘉朗ディスクリート半導体事業部事業部長)と手応えを得ている。

 2点目は新分野の開拓。14年冬にはエアコンやエレベーターに搭載する汎用インバーター向けパワー半導体モジュール事業を始めた。半導体事業の選択と集中を進める中で、同事業は04年に三菱電機に売却した経緯がある。その後、予想以上に市場が拡大しており、再参入した格好だ。

 また車載や産業機器、鉄道などで需要が高い1200ボルト以上の高耐圧分野の開拓に乗り出す。東芝によると同分野の13年度から16年度までの平均市場成長率は11%と高く、「既存のシリコン素子のほか、(次世代の)SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)の製品も展開していく」(成毛執行役専務)と強調する。

 SiCパワー半導体については、すでに、4インチウエハーで製品化済みだが、コストが高いことが課題。また、高温状態下で使用されることが多く、取り扱いが難しいという課題も残っている。

 東芝は社会インフラ事業も展開しており、パワー半導体事業にとっては社内にユーザー企業がいる状況にある。成毛執行役専務は「社内でタッグを組んで優れた製品を開発し、そのノウハウを社外に展開していく」と方向性を示す。
(肩書きは当時)
日刊工業新聞2015年10月29日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
国内は三菱電機、ルネサスもパワー半導体を強化しており、海外もインフィニオンなど大手も手強い。トヨタのハイブリッド車向けでは富士電機などが実績がある。東芝の規模でどこまでコスト競争力を出していけるか。日立も中途半端に残っているが、パワー半導体も業界再編の可能性は十分ある。

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