ベンチャーの補助金利用を考える―「注意すべきはその中毒性」(イービーエム社長)

補助事業に採択されてもまず自社で資金を調達。精算対策で何度も自治体などに事前相談を!

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イービーエムは心臓のバイパス手術を訓練できる装置の事業化に成功
 補助金は劇薬。用法と用量を守り正しく使わないと会社がつぶれる。確かに補助金は新技術や製品の開発リスクを減らしてくれるありがたい存在だ。「製品開発の3分の2を助成する」という補助金であれば、67%オフのバーゲンで欲しいものが手に入ることになる。だがこれには落とし穴がある。必ず33%分のお金が流出するからだ。補助金申請のために急いで作った予算書で何千万円という投資を簡単に実行してしまうというのは恐ろしい。もし自社での全額負担なら、もう少し考えるのではないだろうか。

 【目的と手段が逆に】
 さらに注意すべきなのはその中毒性にある。何年間も67%オフの買い物に慣れると、定価で買うことになった際に物価が3倍に跳ね上がったように感じてしまう。そうすると、その状況に耐えられず補助金を取り続けることになってしまう。

 本来補助金とは「どうしても挑戦したいプロジェクトがあるがリスクが高いので資金を支援する」という趣旨のものだ。だが中毒になると「資金を得るためにプロジェクトをやろう」と、目的と手段が逆になる。だから経営者は本来の計画を見失わず会社がやるべき計画を立てるべきだ。計画書を見直した際に「たとえ補助金がなくてもやる」と思えなければならない。補助金なしで黒字になる計画を立て、「もし補助金が当たったら充てよう」と考えるくらいがいい。補助金公募のタイミングで良い計画が立てられるとは限らないため「やらない」という決断も重要だ。

 【悩ましい「精算払い」】
 また補助金は制御が難しい。補助金は営業外収益として課税される。決算時期、キャッシュフロー、減価償却を慎重に制御しないと利益として課税され黒字倒産することもある。だから補助金を取る前に綿密に計画することが必要だ。書類を溜めてしまい、実績報告の段階になって振り返るのでは手遅れだ。

 また「補助金は精算払い」ということが経営者を悩ませる。私は補助金採択に関して、会社の口座にある日「どーん」とお金が入ってくるものだと思っていた。だが実態はそうではない。計画書に基づきプロジェクトを進め、お金を使い切って、最後に仕様書や領収書などの1年分の書類をすべてチェックされ認められた書類分だ
けが支払われる。

 つまり補助事業に採択されても、まず自社で資金を調達しなければならない。結局私は社長として個人保証し、自分の人生を賭けることになった。まさに命がけだ。だから精算を確実にするために自治体や団体の事務局に何度も足を運び事前相談を念入りに行った。経営者は補助金頼みではなく、綿密な計画に基づき本当にやりたいと思うことで成果を出さなければならないと思う。
 【略歴】朴栄光(パク・ヨンガン)06年(平18)イービーエム設立。09年早稲田大院理工学研究科博士後期課程単位取得退学。東京都出身(日本国籍)、33歳。工学博士。
(日刊工業新聞2015年03月30日 パーソン面)

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●中小企業診断士からの応援歌=知らなきゃ損する補助金●
 官公庁の年度末である3月前後になると新たな予算が動きだし、多くの補助金、助成金の公募がスタートする。業種に関係なく活用できるものには、大きく分けて経産省系と厚労省系があり、その他業種によって総務省、国土交通省といった省庁や関連する独立行政法人、さらに地方自治体による公募が行われている。

 ところで、皆さまは補助金と助成金の違いをご存じだろうか?厳密な違いはないのだが、一般的に補助金は相対評価、助成金は絶対評価で採択の可否が決まる。補助金は一定の公募期間中に申請書を提出し、より優れたものから順番に採択されていく。一方、助成金はある一定の要件を満たせば、予算がある限りは誰でももらえるというものだ。(これ以降は便宜上、助成金も含めてすべて補助金と呼ばせてもらう)

 補助金はあまりにたくさんの数があるため、すべて理解している人は誰もいないが、ミラサポの施策マップではかなりのカバー率で補助金を検索できるのでぜひ活用してみるとよい。

 補助金の中には創業時に1回限りしか使えないもの、社員一人につき1回しか使えないもの、気付いたら公募が終了していたということもあり、知らずに損をしていることが多々ある。定期的にチェックしておくとよいとはいえ、こういった検索サイトで調べても、見たとたんにやる気がなくなる人も多いはずだ。このような検索サイトでは、あまりにたくさんの制度がヒットして、使い慣れた人でないと、自社に適したものをえり分けられないのである。

 検索サイトで困った人は公的機関の窓口や、補助金に強いコンサルタントに相談してみるとよい。彼らとて、すべてを知っているわけではないが、補助金の勘所を押さえているし、採択されやすい補助金についても肌感覚で知っているものだ。自社の業種、資本金、社員数、売り上げなどを伝えて、「こういった事業をやっている(今後やりたい)が何か使えそうな制度がないか」といった形で相談すれば、最適なものをアドバイスしてくれるだろう。
 【略歴】佐々木陽三朗(ささき・ようざぶろう)94年(平6)慶応義塾大商卒、同年日本アジア投資入社。ドリームインキュベータなどを経て2007年オフィス436代表。北海道出身、43歳。
※<中小企業診断士からの応援歌>は、日刊工業新聞で今後1年間にわたり毎週火曜日に3人の中小企業診断士が中小企業やベンチャーにさまざまなアドバイスしていきます。新聞で継続的にお読み下さい。

日刊工業新聞2015年04月14日 中小・ベンチャー・中小政策面

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

依然ベンチャー資金バブルだ。gumiの上場問題がどのような影響を及ぼすか分からないが、ベンチャーキャピタルは投資したくてしょうがいない。自己資金があることにこしたことはないが、最近は銀行や信用金庫もかなり低金利で貸し出してくれる。補助金を含めファイナンスの選択肢は、人前にいろいろアドバイスを受けた方がいい。

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