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水につけるだけで点灯するライトを途上国に―アクモホールディングス

現地生産で雇用機会創出、40億の人々に灯り届けたい
水につけるだけで点灯するライトを途上国に―アクモホールディングス

未電化の現地で使用されるマグネシウム電池

 アクモホールディングス(埼玉県川口市、鈴木進社長、048・229・0915)は、海外の未電化地域など向けのマグネシウム電池を中心とした次世代エネルギーの研究開発・製品販売を行っている。日本貿易振興機構(ジェトロ)の「BOPビジネス・パートナーシップ構築支援事業」にも採択された。BOPはボトム・オブ・ピラミッドの略で低所得者層を指す。同社はこの電池で、販路拡大だけでなく、低所得者層が住む途上国の未電化地域を対象にマグネシウム電池の販売や主要電源としての利用を促進している。

 マグネシウム電池の材料はどこにでもある「マグネシウム・炭素・水」など。未電化地域で販売、利用できるだけでなく、現地生産で雇用機会も創出できる。

 まず、2011年にインドで現地生産を実施。雇用促進に貢献するとともに、生産したマグネシウム電池を主に未電化地域に住む貧困層約1億8000万人向けに低価格(1個200円程度)で販売している。鈴木社長は「世界中に豊富に存在し、どこでも入手できる材料を中心に、低価格な電池を作り、貧困地域の電化に貢献したい」と語る。

 15年5月には、大震災に遭ったネパールへ防災用ライトである「アクモキャンドル」を2000個贈った。「アクモキャンドル」はマグネシウム電池と小型発光ダイオード(LED)電球を組み合わせた製品。ケースや銅板なども現地で容易に製造できる。水につければ複数回の使用が可能。安定的な起電力を有している。

 また、マグネシウム電池は、正極に空気中の酸素を用いるため構造がシンプルで軽量。活性な軽金属材料のマグネシウムを用いることにより、安全で環境負荷の少ない塩水のみで発電する。また、発電の際も発熱が少なく、有害物質を出さない。アクモキャンドルは、同社の主力商品として海外や被災地での防災用灯のほか教育キット、催事用品などにも用途が広がっている。

 アクモホールディングスではこのほか、大型マグネシウム―空気電池発電機「ひかり―SUN」などの製品を展開、大型マグネシウム空気電池への開発を本格化させている。アクモキャンドルと比べ光量が多いため、家庭用の主電源として未電化地域で需要がある。A5サイズの電極で最大1・1ボルト、2アンぺア出力だが、現在では、B4サイズの電極で定格電圧1・4ボルト、10アンぺアの出力までに向上させている。今後の開発では、電気自動車(EV)での応用が期待されている。負極と電解液を交換するメカニカルチャージ方式により、従来のリチウム電池のように充電に時間を要することなく、再駆動ができる。

 また、スマートハウス用電源などスマートグリッド構想での利活用の可能性も検討しており、鈴木社長は「『アクモ電池』で全世界の未電化地域に住む低所得者層約40億人に灯りを届けたい」としている。
(文=さいたま・渡辺光太)
日刊工業新聞2015年10月28日 モノづくり面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「アクモキャンドル」は消しゴムくらいの大きさで、いざという時のために私も鞄に忍ばせています。 途上国では停電が常態化している地域も多く、アクモ電池が広がれば生活や医療、産業の可能性も広がるのでは。

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