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雪でサーバー冷やせ!−北海道美唄市などが「ホワイトDC構想」

廃熱で植物栽培も
雪でサーバー冷やせ!−北海道美唄市などが「ホワイトDC構想」

実証試験施設(現地視察会)

 北海道美唄市や雪冷房の設計を手がける雪屋媚山商店(札幌市北区)などは、雪の冷熱エネルギーでコンピューターサーバーの冷却費用を削減する「ホワイトデータセンター(WDC)構想」を進める。美唄市の空知団地内に実証試験施設を建設したほか、北海道立総合研究機構(道総研)と研究開発に関する協定も結んだ。北海道庁も部署横断の支援チームを創設しており、WDC構想の実現に向けて大きく前進した。
 
 実証試験施設は除雪・排雪を集めて貯蔵した雪山を活用し、高効率熱供給システムを研究開発する。延べ床面積はデータセンター棟と機械設備棟で約148平方メートル。共同通信デジタル(東京都港区)とテコラス(同新宿区)のサーバー計174台を設置した。
 
 近くに除排雪約1000トンを盛り上げた雪山を設け、断熱材としてチップ材などで覆い、屋外で保管。雪が冷水となり、地下の配管を通じ、施設内の空調機から冷気となって室内を冷やす仕組みだ。このほど現地視察会を実施し、東京のデータセンター関連企業などから約50人が参加した。
 
 WDC構想は、従来は廃棄していた雪をサーバーの冷却に使用する一方、サーバーの廃熱を植物栽培や魚介類の養殖に活用する計画。
 
 このため企業誘致だけでなく、地域活性化や新産業創出も期待できる。今後、隣接する土地に植物工場などを建設し、サーバーの廃熱を活用する試験にも取り組む予定だ。
 
 道総研は2015年度からの第2期中期計画で、地域に分散した資源エネルギーを有効活用するための研究開発に重点を置く。美唄市の取り組みがこの方針に合致し、協定につながった。具体的な支援は今後詰めるが、高橋幹夫美唄市長は「技術的な助言だけでなく、パートナーとして連携・協力してほしい」と話す。
 
 同構想は14年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「再生可能エネルギー熱利用技術開発」に採択。15年5月には道庁が総合政策部や経済部など部署横断的にWDC支援チームを発足させた。
2015年10月26日 中小企業・地域経済面
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
厄介者の雪をデータセンターの冷房に使い、データセンターから出る熱い排熱は植物工場などに使うという無駄のない構想です。夏まで雪を保管するのは大変と思いますが、雪国に雪冷房が広がってほしいです。

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