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「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(6)京セラ流で意識改革

「常に謙虚に素直な心で」―フィロソフィをJAL向けにアレンジ
「皆さんの職場に謙虚な人はいますか。それはどのような人か、話し合ってみてください」。

 2月のある日、羽田空港に隣接する日本航空(JAL)第一テクニカルセンターの一室で行われた「フィロソフィ教育」は、全社員が3カ月に1度参加するワークショップ。今回のテーマは、名誉会長である稲盛和夫の経営哲学のエッセンスを箇条書きにした「JALフィロソフィ」の1項目である「常に謙虚に素直な心で」だ。

 ワークショップは経営破たん後の2011年4月から始まり、3カ月ごとに内容を変えて現在16回目を数える。役職や部署に関係なく5人程のグループに分け、進行役のファシリテーターがテーマを投げかけながら、グループディスカッションを中心に進める。ファシリテーターを務める意識改革・人づくり推進部フィロソフィグループの小泉明彦を中心に、「謙虚とは何か」を考えながら、2時間のワークショップはテンポよく進む。

 小泉は入社から昨年5月まで15年間、整備士として航空機の塗装などを担当していた。参加する側だったフィロソフィ教育のファシリテーターを、自らやるとは思いもよらず、当初は戸惑った。だが、9カ月たった今は「きれいごとだけでは伝わらない。いかに自分たちの言葉で伝え、気づいてもらうかが大事」と話す。

 JALフィロソフィは京セラのフィロソフィをベースに、サービス業である航空会社向けにアレンジしたもの。2部構成で40項目あり、「美しい心をもつ」といった道徳的な内容から、「正しい数字をもとに経営を行う」など、ビジネスに即した項目もある。

 京セラ創業者の稲盛和夫が、経営破たんに陥ったJALを救うべく持ち込んだのは「フィロソフィ」「部門別採算制度」の二つ。このうち、京セラで展開していたフィロソフィのJALへの移植は、稲盛とともに京セラからやって来た取締役の大田嘉仁が中心となり、11年9月ごろから進められた。

 再生の両輪である部門別採算制度の導入に時間が掛かったため、経営改革と言ってもしばらくは、フィロソフィだけの状態が続いた。大田は「(JALには)精神論をバカにする文化もあって、最初は評価の低い活動だった」と振り返る。(敬称略)
日刊工業新聞2015年03月12日 建設・エネルギー・生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
京セラとJALのフィロソフィで面白いなと思うのは、必ずしもビジネスで必要な要素ばかりでなく、人としてどうあるべきか、という道徳的な要素も多いと言うことです。読むたびに、関係のない私も背筋が伸びるというか、身につまされるものがあります。

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