【TPPインパクト】メルシャン、国産ブドウの栽培拡大

関税撤廃に備え、外国産を模倣せず“日本ワイン”死守へ

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ブドウの選果工程
 メルシャンが自社管理畑を中心に、日本ワイン「シャトー・メルシャン」の事業を拡大している。国際ワインコンクール入賞などで関心が高まる日本ワインだが、国内ワイン市場(数量)に占める割合は約2%とわずか。国産ブドウ100%が日本ワインの原則なだけに、供給能力不足がネックとなっている。メルシャンは山梨県甲州市の城の平、長野県上田市の椀子ヴィンヤードに次ぎ、長野県塩尻市に約7ヘクタールの自社管理畑を確保。2027年までに自社管理畑の合計面積を60ヘクタールに広げたい考えだ。

 環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意で、輸入ワインではチリや豪州に次いで米国ワインも関税が将来、撤廃される。1本500円クラスの低価格ワインは今後、競争激化が予想される。

 「日本ワインは生産量を大幅に増やしコストメリットを出さない限り、3ケタ台の価格は無理。輸入ブドウを使った国産ワインに今後”輸入ブドウ使用“表示が義務づけられるのを機に日本ワインの品質をアピールしていきたい」。松尾弘則シャトー・メルシャン工場長が語るように、日本ワインの生き残り策は生産量拡大と品質向上、PRだ。

 「外国産、特にフランスのワインと競争や模倣をせず、日本独自のワインを目指したい。甲州やマスカット・ベーリーAのような日本固有品種はもちろん、メルローやカベルネ・ソーヴィニヨンなど欧米品種のワインも、日本の料理に合う味を目指したい」。横山清社長はシャトー・メルシャンが目指す方向を示す。1877年誕生の大日本山梨葡萄酒をルーツとする老舗としてモノづくり企業の本質を失ってはならないと強調する。

 ワインの品質を高める基本的方法はブドウの栽培技術と果実の選別、貯蔵タンクの適切な温度管理や嫌気的処理などだ。白ワインをつくる時の果実の破砕処理では、果汁と空気の接触による酸化を防ぐために窒素ガスを充填し、酸素をシャットアウトする。

 2010年の設備投資でワイナリー内にも窒素発生器を導入。充填や移動の際に窒素を使えるようになったため、酸化ダメージを大幅に低減できるようになった。ポンプで果実を圧力搬送するとブドウ果皮が破れて味が崩れる心配があるため、一部ワインの搬送では重力を利用した方法を採用。文字通り”優しく“扱っている。

 生産コストを下げるためなら大容量タンクで集中生産した方が手っ取り早いが、シャトー・メルシャンは産地や品種ごとの味の違いに対応するため、小容量タンクが基本だ。これにより同じブドウ畑の中でも南側と北側とか、きめ細かな生産管理が可能になる。

 椀子ヴィンヤードの「ソーヴィニヨン・ブラン2014」は早く収穫した香りのよいブドウと、味わいを出すため遅く収穫したブドウを組み合わせた。きめ細かい技術と心配りが日本ワインの品質を支えている。
(文=嶋田歩)

日刊工業新聞2015年10月20日 生活面

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

「品質=生き残り」。よくあるフレーズだがそんな単純な話ではないだろう。メルシャン(キリン)はワインの輸入業者でもあり、TPPを受けワイン事業をどのようにハンドリングしていくのか。この記事だけでは分からない。ブドウ生産や醸造で規模のメリットを出していく時に、どのような「資本」が必要で適切なのかを考えなければいけない。

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