寡占市場に挑むニッポンの補助人工心臓

国内勢、小型の埋め込み型を開発

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補助人工心臓「エヴァハート」(サンメディカル技術研究所提供)
 心臓は、全身に血液を送る重要な臓器である。心筋梗塞、拡張型心筋症などの疾患や加齢が原因でポンプとしての機能が落ちても、休むことのできない心臓は、血液を全身に送ろうと無理を重ねる。その結果、心臓の機能はさらに低下し、全身に十分な量の血液が行きわたらない「慢性心不全」という状態になる。重度の慢性心不全患者の場合、寝たきりの状態となり、残された最後の手段が心臓移植である。

 【不足するドナー】
 心臓移植は、脳死のドナー(臓器提供者)から提供された心臓を移植する手術である。日本では、1997年に臓器移植法が施行され、脳死を人の死として受け入れられた。さらに、2009年の法改正により、家族の承諾があれば臓器提供が可能となり、心臓移植が増加、14年には37件の心臓移植が行われた。

 一方、心臓移植を待機している人も、年々増加し15年8月31日時点で、431人となっている。心臓移植の必要な患者に対して、ドナーは不足している。心不全は、進行性の病気であるため、患者は心臓移植のドナーが現れるまで命をつなぐ必要がある。そのために用いられる医療機器が、補助人工心臓だ。
 
 補助人工心臓は、血液を全身に送る左心室の機能の低下を補うため、左心室に穴を開けて、そこから血液をくみ出し、大動脈へと流すポンプの機能を果たす。ポンプ部分が体外にある体外型と、体内にある植え込み型が存在する。補助人工心臓により、血液循環の良くなった心不全患者は、通常の生活に戻れるくらいに回復する。

 移植ドナーの不足のため、心臓移植までの一時的な使用ではなく、永久的な使用も行われている。なかには、補助人工心臓を装着していると、患者の心臓が回復することもあるため、補助人工心臓の取り外しも試されている。

 【寡占市場に挑戦】
 補助人工心臓の開発の歴史は古く、初期から日本人が積極的に関わってきた。80年代に日本ゼオン、東洋紡がそれぞれ体外型補助人工心臓を開発した。

 その後、植え込み型補助人工心臓が主流となり、テルモのデュラハート、サンメディカルのエヴァハートという埋め込み型補助人工心臓が医療機器として承認され、世に送り出されている。さらに、三菱重工業とニプロが共同で、小型の埋め込み型補助人工心臓を開発し、欧米による寡占市場に挑戦しようとしている。
 
 医療機器は臨床経験と技術の蓄積が必要とされる分野である。技術と経験を連綿とつないでいる今後の日本企業の活躍に期待したい。
(文=旭リサーチセンター主幹研究員・毛利光伸)

 ※日刊工業新聞では「医療機器新事情」を毎週火曜日に連載中

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア事業担当 DX統括

先日、大分大医学部が補助人工心臓の植え込み手術に成功した。これで在宅治療が可能になり、社会復帰にも近づくという。現在、人工透析患者数は約30万人、補助人工心臓の患者数は約200人ともいわれている。医療や医療機器の進化に国境は関係ないが、課題先進国の技術の見せ所である。

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