ソフトウエア技術が仮想空間のカギを握る

インダストリー4.0連載第二部#04 政治とは別のロジックで産業界は動く

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 インダストリー4・0(I4・0)の実用化において重要性が増すのがソフトウエア技術だ。工場自動化(FA)分野の競争では、ソフトの持つ力は欠かせないものになりつつある。

 【世界3強】
 「これまで40億ドル(約4800億円)をソフト企業の買収につぎ込んできた。今後も間違いなく強化を続ける」。独シーメンスのデジタルファクトリー部門で戦略担当責任者を務めるハンス・ラウナー氏は強調する。40億ドルのうち35億ドル(約4200億円)を費やしたのが、2007年に行った米UGSの買収。これにより同社は、3次元CADソフトで世界3強の一角に名を連ねることになった。

 現代の3次元CADはシミュレーション技術を取り入れて高機能化。製品設計にとどまらず、設備のレイアウトからFAシステム設計まで、幅広い工程を仮想空間上でこなせるようになってきた。「我々も07年までは単なるFAの会社だった。FAの業界でも顧客の利便性を飛躍的に高めるのはソフトの力だ」(ラウナー氏)。

 【双子の世界】
 I4・0を支える技術として重要視される考え方に「デジタルツイン」がある。システム上に、あたかも双子のように現実世界を模したシミュレーション空間を構築し、現実の工場の制御と管理を容易にする手法。3次元CADはその根幹を支える技術と言える。

 シーメンスのほかにも、ドイツでI4・0を推進する大企業はこぞってソフトに注力する。統合業務パッケージソフト最大手のSAPはもちろんだが、自動車部品最大手のボッシュもビッグデータ解析などのソフト技術強化策を打ち出した。

 【中小に恩恵】
 中堅中小企業にソフトの恩恵をもたらそうという動きもある。独フラウンホーファー研究機構生産技術・オートメーション研究所(IPA)のヨアヒム・ザイデルマン博士が進めているのは中小企業が使いやすいI4・0システムの事業化だ。

 「バーチャル・フォート・ノックス」と呼ぶこのプロジェクト。クラウド方式で提供し、プラットフォーム型のシステムとして、多くの応用ソフトが動いて利便性を高める仕組みを考えているという。ザイデルマン氏は事業化に向け出資企業などを求めて奔走中だ。

 フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正やシリア移民問題などを受け、ドイツでもかすんだ観があるI4・0。だが「政治とは別のロジックで産業界はI4・0を促進するはず」(ドイツ情勢に詳しい科学技術振興機構の澤田朋子フェロー)。依然目が離せない。

COMMENT

清水信彦
福山支局
支局長

 シーメンスの3DCADは、日本の自動車メーカーにもユーザーが多い模様です。仏ダッソー・システムズの「CATIA」と並んで多い。この分野は、日本には有力ソフトメーカーが全くなくなってしまいました。しかしI4・0による標準化が進んで、他社製品などとの連携が容易になれば、おそらく日本のユーザーも恩恵を得られるようになります。  一方で、フラウンホーファーのザイデルマン博士のように、大手メーカーの戦略を「囲い込みだ」「独占だ」といって、中堅中小にITを広めようと駆け回る人もいる。  こうした重層性、多様な動きがあるのが面白いところ。  個人的には、判官贔屓なのでフラウンホーファーの味方をしたくなります。

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