日立“つながる車両”英国を走る。センサーで故障診断、部品交換に先手

17年までに保守拠点にIoTシステム導入へ

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昨年開催されたイノベーションフォーラム
 日立製作所は英国の鉄道車両保守拠点(デポ)に、モノのインターネット(IoT)技術を導入する。IoTを使って走行データをデポに集め、故障の因果関係を調べる「フォルトツリー解析」で分析。その結果を車両製造に反映し、故障しにくい部品や効率的な機器を作る。2017年にも英国・都市間高速鉄道計画(IEP)向け車両に採用し、車両が走れば走るほど改善するモノづくりを目指す。

 日立はIEP向け車両の運用に備え、17年までに英国にデポを新設・改修する。IEP向け車両とデポをITシステムでつなぎ、機器の稼働状況や部品の状態をセンサーで監視しデポに集める。これらの走行データを製造や保守に役立てる。

 現在、傘下の研究所と共同で、機器や部品への負荷が故障や摩耗にどう結びついているかを調査している。走行データは、09年に英国に納めた高速車両「クラス395」の情報を使う。これにより不具合解析手法のフォルトツリー解析を鉄道車両分野で確立し、IEPに採用する。

 17年からIEP向け車両の運用が始まるが、その走行データをビッグデータ(大量データ)として収集しフォルトツリーで解析。笠戸事業所(山口県下松市)や英国ダーラム州の工場にフィードバックし、最適な設計に変更したり、機能を付加するなどモノづくりの改善に生かす。

 保守では機器や部品の予兆診断に活用し、故障を未然に防ぐ。どのように走行すると故障や劣化が起きるかを割り出し、最適な時期に部品交換や修理を実施。予防的に部品を交換して列車の遅延や運休を減らしたり、部品交換の時期を延ばすことも可能になる。

 日立はIEP向けに高速車両122編成(866両)を受注。笠戸事業所と英国工場で製造し、19年までに納入を終える予定。

社会イノベーションのイベント、今年から「脱総花」


 日立製作所は29、30の両日に都内で、日立グループの世界最大のイベントを開く。テーマは、顧客のイノベーションを共に創出し成果を分け合う「協創」。多種多様な協創の効果を訴えるため、今年からイベントを全社的な事業に変更し発信力を強めた。協創の概念を全世界に広め、いかにビジネスに結びつけるかが問われる。

 【本社部門が主導】
 名称は「Hitachi SOCIAL INNOVATION FORUM2015―TOKYO」。東京国際フォーラム(東京都千代田区)に前年度比1割増の4万5000人を呼び込む。

 従来は情報通信部門が主導しIT関連事業を中心に訴求していたが、今回から本社部門のブランド・コミュニケーション本部が担う。溝口健一郎本部長は「日立グループ全体を巻き込み『ワン日立』となって協創を発信する」と狙いを話す。

 日立はインフラ技術とITを融合し社会課題の解決策を提案する「社会イノベーション事業」を推進している。その活動を担うのが協創だ。耳慣れない言葉を顧客に認知してもらうには、全社的な活動が欠かせない。

 イベントでは協創にこだわった。中西宏明会長兼最高経営責任者が協創を通じた中長期の戦略を説明するほか、オープンイノベーションの概念を広めたクリス・アンダーソン氏も登壇する。また電力や水処理、ヘルスケアなど7分野で協創事例を紹介し、42のセミナーを実施する。

 訴求ポイントが散漫になれば、日立の事業分野や強みも伝わりにくい。そこで協創の概念に沿わない事業の紹介は、あえて省いた。「総花的にしないためだ」(溝口本部長)。日立と言えば社会イノベーションと協創というイメージを植え付け、ビジネスにつなげる考えだ。

 【認知度依然低く】
 ブランド戦略を統一し訴求力を強めているが、海外の競合相手に比べると、まだ国際的な認知度は低い。調査会社の米インターブランドが10月に公表したブランドランキングでは、100位以内から漏れた。一方、米ゼネラル・エレクトリックは8位、独シーメンスは53位に入っており、その差は歴然だ。

 海外市場に参入する上で、ブランドイメージの影響力は大きい。日立が打ち出すメッセージは定まったが、その優位性を広く認知してもらうのはこれからと言える。また「日立のメッセージと受注(の獲得)をどう橋渡しするか」(同)という問題もある。
 
 今後、日立ブランドを世界の「HITACHI」に昇華させ、どうビジネスにつなげるのか。

日刊工業新聞2015年10月23日 1&電機面

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明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

日立にとってはIoTの一番現実的なソリューションでほぼ予定で通り。乗客などのサービスへどのように還元できるかも将来は期待。

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