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赤とんぼの「自動撮影装置」を開発、何に使う?

国⽴環境研究所と早大の研究チーム
赤とんぼの「自動撮影装置」を開発、何に使う?

美しい赤とんぼ(image by David Mark from Pixabay)

国⽴環境研究所と早稲⽥⼤学の研究チームは、安価で省電⼒な光センサーを応⽤し、棒の先にとまった⾚とんぼ類を⾃動撮影する装置を開発した。実際に野外に設置して精度よく撮影できることを確認しており、1ヵ月に1度程度カメラの電池を交換するだけで野外で数カ⽉間以上、稼働したという。実⽤性の⾼い装置を⽤いた⾚とんぼ類の⾃動撮影に成功した例は世界初となる。赤とんぼは、自然豊かな里山の「指標生物」。近年、個体数が激減しており、農薬や耕作放棄地の影響が指摘されている。この装置なら手間がかからず、赤とんぼの生態を記録でき、分布変化などをくわしく調べることができそうだ。

自動撮影装置のイメージ(国⽴環境研究所提供)

現状では、⾚とんぼ類を把握する調査⽅法は限られており、⼀般的には⽬視でヤゴ(幼⾍)の抜け殻や成⾍を調べるという⽅法で⾏われるが、天候等の影響を受けやすく、⼿間もかかり、広い範囲で継続的に調査を実施することは中々難しかった。

研究チームが開発した⾃動撮影装置は、⾚とんぼが棒状の物体の先にとまりやすいという性質に着⽬して開発された。CdS セル と呼ばれる 1 個数⼗円程度の受光部のみの光センサー2 個を USB ケーブルでマイクロコンピューター(以下「マイコン」)に接続し、アクリルパイプ、塩ビパイプ等で保護した、安価かつ簡易なものだ。とんぼがとまった先に受光部のみの光センサーを設置することで、そこにとまったとんぼを高い精度で検出し、自動で撮影できる。

野外に設置された⾃動撮影装置(国⽴環境研究所提供)

2016年から行われてきた実証実験の結果、⾃動撮影装置は1ヵ月に1度程度のカメラの電池交換を⾏えば⾚とんぼ類がよく⾒られる秋期の数カ⽉を通し、野外設置可能であることを確認。短期間の実験では、⼗分実⽤的な精度で⾃動撮影を⾏うことが可能であることも⽰唆された。

(上)⾃動撮影装置で撮影されたノシメトン ボ、 (下)⾃動撮影装置で撮影されたアキア カネ⼜はナツアカネと⾒られる⾚とんぼ。(国⽴環境研究所提供)

新型コロナウイルスの感染拡大の影響下や、福島の原発事故による避難指⽰区域のように移動制限が発⽣しうる状況での継続的な⽣物多様性データを蓄積する上で、生物の性質に目を付け、省⼒的な無⼈調査技術を開発するという動きは重要だ。

この装置の発明を受けて、近年の⾚とんぼ類の分布変化の実態解明のみならず、棒の先に⽌まる性質を持つ他のとんぼ類や⿃類などの⽣き物の無⼈調査技術の進展が期待できそうだ。

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