会見で話題のJPX・横山CIOは早大・落研出身!
1日の東京証券取引所の取引の全売買終日停止を受け、同日東証は謝罪会見を開きましたが、出席した東証を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)の最高情報責任者(CIO)・横山隆介さんの理路整然とした受け答えがSNSなどで話題になっていました。横山さんは、日刊工業新聞の2015年6月の「週末は別人」というコーナーに登場し、早稲田大学の落語研究会出身で、落語への愛を語っています。
大学では絶対に落研に入ろうと決めていた
最近、土日も含め週に一度は都内の寄席に通っている。海外取引所との競争や証券取引の高速化など、証券取引所の仕事は日増しにスピード感を増しているが、世間と隔絶された寄席の中にはゆったりとした時間が流れている。名人の語り口に身を任せて落語の世界を旅する時間は、日頃のストレスや忙しさを忘れられる貴重なリフレッシュタイムだ。
◇初めて落語に興味を持ったのは小学生の時、父が持っていた落語のレコードがきっかけだ。プレーヤーから流れる落語を聞いて、落語家の表現の多彩さやストーリーの魅力にひかれた。当時は神奈川県の西部に位置する足柄上郡松田町に住んでおり、子供一人で都心に出て寄席に行くことは難しかった。レコードや古典落語の本を通じ、落語にのめり込んでいった。
初めて生で落語を聞いたのは、中学生の時に地元の市民会館で開かれた“ホール寄席”。その時高座に上がっていたのが、新作落語の大家である三遊亭円丈師匠だ。それまで親しんでいた古典落語とは違い、型破りでシュールな雰囲気を持つ師匠の落語に魅了された。円丈師匠は今でも最も好きな落語家だ。
中学・高校には落語研究会がなかったので、大学では絶対に落研に入ろうと決めていた。早稲田大学に入学し、無事落研に入部。当時の顧問が、名著『古典落語』の編者である興津要先生だったことに驚いたが、何より衝撃だったのは、自分とは比べものにならないくらい落語に詳しい先輩たちの存在だった。
落研では実際に落語の練習をし、先輩に披露する機会があったのだが、毎回思いっきりダメ出しされるのでかなり緊張したことを覚えている。老人福祉施設でのボランティア公演も行ったが、外部の人の前で演じる方がよっぽど気楽だった。
残念ながら、社会人になって落語が仕事に役立ったことはほとんどない。ただ、入社直後の宴会や同期の結婚式で「酒の粕(かす)」「つる」などの小話を披露させてもらったのは良い思い出だ。
仕事の忙しさもあり、しばらく落語からやや離れていたが、最近また寄席に通う日々が再開している。落語家の方は「落語は本当に何の役にも立たない」と言うことがある。だが私にとっては、ストレス解消や旧友との話題づくりに役立つ、無くてはならないものだ。