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ピケティより断然ユーモア溢れる三文作家の亡国論

著者登場 『管見妄語(かんけん・もうご)―とんでもない奴(やつ)―』(藤原正彦)
ピケティより断然ユーモア溢れる三文作家の亡国論

女房が『ワザと下手に書いたの?』と言ったとか

 
 ―『週刊新潮』(新潮社)で連載中です。軽妙な文章の中に、政治や経済への痛烈な批判が込められていますね。
 「アベノミクスというが、地方に行けばシャッター通り、中小企業は全く良くなっていない。(『21世紀の資本』の著者)トマ・ピケティが見抜いたように、新自由主義経済下では1%の人が5割の富を握る。自由に規制をかけないと弱者は守れない。安倍(晋三首相)さんも『毎週読んでいます』と言ってくれているが、それならもう少し言うことを聞いてくれればいいのに(笑)」
 ―小学校からの英語教育にも批判的です。
 「『グローバル人材の育成』と言うが愚民化政策だ。英語が5割、日本語も5割では米国でも日本でも使えない。国際的に通用する人材にするにはどちらかを10割にしなければならない。日本の科学者は英語が下手だが、19個もノーベル賞をとっている。まずは日本語と日本の文化を身につけさすべきだ」
 ―環太平洋連携協定(TPP)参加にも批判的ですね。
 「TPPとはかつてのブロック経済だ。あの時代、日本が旧満州に出て行かざるを得なかったのもブロック経済のせいだった。今度は冷戦の終結で、米国は日本をターゲットに金融ビッグバン、三角株式取引解禁、郵政民営化、TPPを仕掛けてきた。郵政が上場すれば、350兆円もの国民資産が狙われる。農協自体は問題が多いが、依怙贔屓(えこひいき)してでも農業を守らなければ国が滅ぶ」
 ―数学者でありながら政治や経済にもの申すきっかけはなんでしょう。
 「父(新田次郎)からは『弱者はどんなことをしても守れ』という武士道精神を、母(藤原てい)からは『どんなことがあっても生き抜け』という強さを学んだ。米国には友人も多いが、このままでは日本の国柄が滅ぶ、と立ち上がった」
 ―「管見妄語」というネーミングの訳は?
 「大きなことを言うので、『狭い了見です』と謙遜している。最初の読者の女房には『ワザと下手に書いたの?』と時々言われる。そういえば母も父と夫婦喧嘩(ふうふげんか)すると、『この三文作家!』って怒鳴ってたね(笑)」
 
 【著者プロフィル】
 1968年(昭43)藤原正彦(ふじわら・まさひこ)東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学名誉教授。『若き数学者のアメリカ』『国家の品格』など著書多数。新田次郎と藤原ていの次男。旧満州新京生まれ、71歳。
日刊工業新聞2015年02月23日books面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
週刊新潮での連載コラムをまとめたこのシリーズも5冊目。前のシリーズに比べ、政治・経済のネタは少し少ない感じもするが、ユーモアに富んだ鋭い視点は相変わらず。ピケティの「21世紀の資本」には触れられていないが、日本が一番直面する格差の課題は「世代間の格差」だろう。藤原氏の父母にも問うてみたい。

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